カテゴリー「車両セッティングについて」の投稿

車両セッティングについての質問を掲載します

2021年8月26日 (木)

Q&A コーナー『 ステムベアリング の調整について 』を掲載しました

   
「 ステムベアリング を調整したいのですが・・ 」という質問が届きましたので、その方への回答を公式Webサイトに掲載しました。

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回答では、オートバイで使われている多くの種類のベアリングの特製を解説して、ベアリングにとって最も過酷な環境で使用されているのが、スイングアームピボットベアリングとステムベアリングである事から始めて、ステムベアリングの最適な整備・調整方法を、イラストと画像を使って詳しく解説しています。
その解説の中で、ステムベアリングの設計が混迷の遺産で、メーカーが指定する整備方法も最適でない事に触れていますので、関心のある方は、是非、ご覧ください。
    
【 GRA 公式Webサイト 】
https://gra-npo.org/lecture/bike/Q&A/stem_bearing/stem_bearing_1.html


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※ 解説の一部を紹介します。

「ここで、ステムベアリングが辿ってきた苦難の過去と、その原因を解説しましょう。最大の原因は、以前は非舗装の道路が普通だったからです。舗装路面しか知らない人にとっては想像し難いでしょうが、1970年代、国道でも土の道路は珍しくなく、走行と雨の影響によって大きな凸凹はつきもので、それがハンドルの振れを誘発して事故の原因になっていました。それは、“石”を敷き詰めた石畳道路が多く残されていた欧州でも同じであったため、そういう凸凹の大きな道を走行する時の為に、わざとステムベアリングを強く締め込んで“振れ”を小さく抑えられるようになっていました。

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2021年6月 8日 (火)

『 チェーン調整 』アンケート、 中間報告 と Q&A

   
日頃から、GRAの解説コラム・【 オートバイの基本講座 】をご覧くださり、ありがとうございます。
そのうえ、[ チェーンの遊び調整 ]に関する解説記事作成のために、広く皆さんにアンケートの依頼をしたところ、直ぐにアンケート回答やコメントが届き、「 解説記事をきちんと作成しなくては! 」と意欲が高まって、励まされた気持ちになりました。
    
そのコメント欄で質問を寄せて下さった方の質問に合わせて、本日は Q&A 方式で、以下の通り質問に回答をしますので、どうぞ参考にして下さい。また、アンケートの集計結果は、アンケート期限終了後に改めて報告しますので、期待してください。

  

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【 質問 / Question 】

スイングアーム軸とドライブスプロケットが同軸であれば、チェーンの張りがストロークに影響を及ぼす事は皆無で理想的だと思います。
片軸スイングアームのバイクがあるので出来そうな気もするのですが、そこまで必要では無いという事でしょうか?

 

          *****************

 

【 回答 / Answer 】

アンケート回答とコメント・質問、ありがとうございます。
チェーンの遊び調整が必要な理由を正しく理解された方の質問だとわかるのですが、“ 同軸配置 ” の意味や目的を知らない人にも分かりやすいように、順を追って回答を進めます。

   

■ 同軸配置とは ■

スイングアームを車体(フレーム)に組み付けた時の軸(スイングアームの回転軸)と、ドライブチェーンに駆動力を与えている ドライブスプロケットの軸(回転軸)は、下の画像の様に、殆どのオートバイでは離れています。そして、この離れた配置が原因で、走行中に角度が変わるスイングアームとチェーンとの間には常に緊張関係が生まれていて、この緊張関係を少なくする為にチェーンの遊び調整は必要になっています。そして、この緊張関係からうまれる問題を減らす為に チェーンの “遊び” 調整が必要になっています。
     
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そんな緊張関係を解消するために考えられたのが、スイングアーム ピポット(軸)とドライブスプロケット軸 とを重ねて配置する “ 同軸配置 ” で、1970年代、下の画像の様に、一部の市販車両で採用された例があります。
 
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“ 同軸配置 ” は、無駄な緊張関係から解放されるため、当時は耐久性が現代ほど高くなかったチェーンを労り、折損などの破損による事故などを未然に防ぐ目的と、軸が離れている事で生まれるリア周りの車体挙動を避ける目的もあったと考えられますが、特別な構造のフレームが必要になり、剛性面や製造コスト面から採用した車両は殆どありませんでした。

  
  

■ 片持ちスイングアーム / プロアーム ■

そして、多くのオートバイのスイングアームはリアホイールを左右両側で支える構造ですが、質問にあった「 片持ち(片軸)スイングアーム 」とは、下の画像の様に、片方だけで支える方式のスイングアームの事です。
 
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最大のメリットは、リアホイールを固定する部品(ハブ)を大径化して、ホイールとスイングアーム本体との締結剛性を高める事が出来るので、設計次第で、高出力車で発生しがちなリアホイール周りの無駄な揺れ(変形)を減らす事ができ、ダイレクトな操縦性を得やすい事です。
  
  

■ 片持ちスイングアーム + 同軸配置 ■

お待たせしました。片持ちスイングアームに同軸配置 の組み合わせは? という質問に回答します。
私自身、今まで考えていなかったやり方について質問だったので、念には念を入れて考えてみたところ、必然性が高くなく、実現させる為の構造が更に複雑になるので実現は難しいと思います。
  
 
      **********************
  
     
必然性が高くないと考える二つの理由を書きます。一つ目は、1980年代以降、シールチェーンの開発や材質の改良などにより、チェーンの耐久性が格段に向上して、チェーンの破断などの恐れも少なくなっている事。二つ目は、車体解析と車体設計の技術が進んだ事です。一般的な “軸配置” の場合に避けられない駆動によるリア周りの車体挙動ですが、ホイールストローク量が格段に増えたにも関わらず、その挙動を抑える設計が浸透している事です。
     
そして、実際に製作する場合の構造を考えてみると、最も懸念される寸法が ドライブスプロケットの車体中心からの距離です。一般的なチェーン駆動車の場合、チェーンはリアタイヤの外側を通す必要があり、リアタイヤ幅を 180 mm とすれば、ドライブスプロケットは 車体中心線から 左右方向へ 100mm以上オフセットさせる必要があり、“同軸配置” 用の 片持ちスイングアームを製作するとすれば、エンジン後部がスイングアーム固定用の形状になっていない限り、ドライブスプロケット の更に外側に スイングアームを配置する事になり、その上、スイングアームを固定するフレームも配置する必要があるので、かなり横方向に幅が広く複雑な構造になると思います。
でも、仮にスイングアームを ドライブ軸と同軸で固定できる形状と剛性のエンジンが生まれたなら、容易に “同軸配置” の方式が採用できそうですね。

  

以上、長文の気ままな解説に付き合って下さり、ありがとうございました。


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2019年10月11日 (金)

<Q&A> タイヤの空気圧の調整は


【 質 問 】

タイヤの空気圧についての質問です。
今は、メーカー指定の空気圧に合わせていますが、ネットでは雨の日は少し下げた方が良いとか、高めが良いとか出ています。
また、サーキットなど高速走行する時には低目にするとか書いてあります。
実際にはどうでしょうか。おすすめはありますか。。
私はタイヤの空気圧の調整ぐらいしかできませんが、ライディング・セッティング クリニック にお邪魔しても良いでしょうか。

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【 回 答 】

タイヤの空気圧について、質問をくださり、ありがとうございます。
確かに、タイヤの空気圧については諸説色々と書かれていますので、迷う人は少なくないでしょう。
 
では、最初にお勧めしたい、「 簡潔編 」から案内します。

1. 先ず最初に、あなた専用のエアゲージ( マイゲージ )を準備します
2. 次に、車両メーカーの推奨値か、それを参考にして、前後タイヤそれぞれに
  【 基本空気圧 】を決めます
3. そして、乗る度に、天候や降雨の有無に関係無く、冷間時(走行する前)に、
   その【 基本空気圧 】に調整します

以上で、タイヤの性能は十分に発揮できます。


<簡潔編・お勧めの理由>

〇・ エアゲージには個体差があり、エアゲージによって測定結果が 10~20 kPa
   (0.1 ~ 0.2 kgf/㎠) 程度異なる事は珍しくありません。まして、不特定多数が使用
   して故障や経年劣化が不明なゲージ、例えばスタンドや販売店などのエアゲージでは
   正しい』調整は不可能だからです。

〇・ 【 基本空気圧 】を決めておく理由は、タイヤの性能はある一定の空気圧によって
   最も良い性能を発揮するように設計されており、降雨などの条件変化によって空気圧
   を変更する必要はないからです。

〇・ 毎回、冷間時に【 基本空気圧 】に調整するのは、一週間、放置したままでも空気圧
   は変化しますし、外気    温の変化で空気圧が変わってしまうのを補う為です。

  
* * * * 以上が「簡潔編」、以下は「基本と応用編」です * * * *
   
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『 タイヤのメカニズムと、最適空気圧 』
   
ご存知の通り、タイヤは路面をグリップして、オートバイとライダーの荷重を支えるだけでなく、走ったり、曲がったりするなど時に欠かせない役割をこなしています。
この役割を果たす為、タイヤメーカーの技術者が苦心している事は、路面と接するゴム素材の改良と荷重を受けた際の変形の仕方です。
   
ゴム素材によってグリップが変わる事はスニーカーでも体験できる事ですが、どんな風に路面と接するかという変形の仕方によっても性能が左右されるので、緻密な解析技術や新開発素材や技術が投入されている部分です。
そして、この変形の仕方を左右する要素の一つが「 空気圧 」ですから、タイヤの性能を正しく発揮させる為には、ゴムの賞味期限を除けば、「空気圧」の調整が大きく影響します。
    
ゴム素材の基本性能は高く、通常使用する路面温度( 0℃ 以上 50℃以下)であれば ほぼ安定した性能を発揮しますが、路面温度や気温の変化に伴ってタイヤ内部の「空気圧」は変化しやすく、それによってタイヤ性能も変化します。
だから、タイヤの立場になって考えれば、タイヤの表面温度や気温や降雨などの状況変化に合わせて空気圧を変更するのではなく、タイヤが最もバランス良く性能を発揮する【最適空気圧】に合わせる事が一番良い結果に近づけるのです。
                      

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『 標準装着タイヤと、メーカー推奨値 』
   
車両メーカーでは、二輪、四輪を問わず、タイヤの「 空気圧 」の推奨値を明記していますが、これも車両本来の正しい性能を発揮する為には「空気圧」の調整が欠かせないからです。
   
ただし、車両メーカーが標準で装着しているタイヤ・標準タイヤは、殆どの場合、その車両専用のタイヤが装着されている事も理解しておく必要があります。
車両の設計と開発の段階で、車両メーカーが強調したい車両性能を伸ばし、抑えたい性能についてはカバーする為、その車両専用に開発されたタイヤを標準タイヤとして採用されています。
    
従って、車両メーカーが推奨する「空気圧」は、標準タイヤでメーカーが想定した性能を発揮させる為の推奨値であり【最適空気圧】と言えます。しかし、標準タイヤからタイヤ交換をした場合には、それは “参考値” 程度と理解するべきで、メーカー推奨値が絶対と考えるのは タイヤ設計上からも正しいとは言えません。
また、標準タイヤと同じタイヤメーカーで同じ銘柄( 名称やトレッドパターン )の市販タイヤに交換したとしても、多くの場合は同じタイヤとは言えません。

 

≪ 備考 ≫

標準タイヤが車両専用タイヤになっている理由は、タイヤメーカーにとって、車両メーカーは大得意先様であり、発注本数が多くて生産計画も明確なので、専用タイヤの開発と納入は必然だからです

 

 

 

『 冷間時調整、温間時調整について 』
   
冷間時調整(通常は短く、冷間と表記します)とは、走行前でタイヤが走行熱で温まっていない状態で 空気圧の調整を行なう事で、温間時調整(温間)とは、走行熱でタイヤ自体が温まった状態で空気圧調整を行なう事です。
    
実際にタイヤが性能を発揮するのは 温まっている時の事で、その時の「空気圧」がタイヤの性能を左右するのですから、本来は温間時に最も良い性能を発揮する【最適空気圧】を探り、毎回の空気圧調整は温間時に行なうの最善の方法である事に誰も異論を挟めません。
が、実際には、温まっている時に空気圧調整を行なうのは一般的ではない為、冷間時の調整が広く推奨されているだけです。
   
その様に、タイヤ技術者の方も “冷間” 時の調整を推奨し、レース現場でのタイヤメーカーアドバイザーも “冷間”時 を基本としてきたため、冷間時調整が最善であるかの様に捉えられてきました。
しかし、タイヤウォーマーの使用が当たり前になっているレース現場などでは、レース本番で想定されるタイヤ温度(ホイールも含め)に事前に温めておき、その温度で最高の性能を発揮する「空気圧」に調整する事が求めらていて、基本 “冷間” という考え方は既に過去のモノになっています。
    
従って、サーキット走行や講習系走行イベントなど、特定のエリアを走っては空気圧測定やタイヤ表面温度測定が可能な場合には、温間時の空気圧調整とデータ収集が基本となります。


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『 最適空気圧について 』

オートバイの性能を正しく安全に発揮させるには、タイヤに正しく適切に能力を発揮してもらう事が必須ですし、それがライダーにも安心感に繋がる事が欠かせません。
その為には、タイヤが最も性能を発揮する[最適空気圧]は、そのオートバイの状態(車種の他、整備やセッティングの違い)とライダーに合わせ(体重や体格、感性が違うので)によって異なる事を理化して、メーカー推奨値だけに捉われず、最適な[最適空気圧]を探し求める努力はとても大切な事です。

 

仮に、気温や路面温度、降雨などの路面状況に合わせた調整を加える場合があって、[最適空気圧]を基本に調整して良い結果が出たならば、その修正値を[最適空気圧]として変更する程の考えの余裕幅を持つ事も必要です。

 

 

『 エアゲージについて 』
   
私は、エアゲージにういて、「 どんなエアゲージを買えばよいか 」とか「 より高性能なエアゲージでの測定を比較して、校正する必要があるのでは 」などと質問を受けます。
そこで、最後に エアゲージについてh、私なりのアドバイスを書き添えます。

1. 機械式より電子式を選びたい

機械式というのは、メーター{指針}が回転したり伸びたりする形式で、電子式はディジタル表示の形式です。
機械式のデメリットは 経年変化や衝撃に弱く、知らない内に誤差が大きくなってしまうからで、安定した管理を行なう為には電子式がお勧めです。
その際、最小目盛(最小計測単位)が 10 kPa ( 0.1 kgf/㎠ ) の 電子式エアゲージ の購入がお勧めです。
   
これは私自身の経験ですが、以前、機械式エアゲージを使っていたのですが、落下させてしまったのか、知らない内に 50~60 kPa ほど低く表示する様になっていて、参加していた競技イベントでシビアになった操縦性が原因で転倒した苦い思い出があるからです。

 

2. 高制度で高額なゲージより、2個買っておきたい

高精度で高額なエアゲージは、確かに絶対的に正しい計測値を示します。が、それは その分だけ定期的に厳密な校正処理を行なう必要があり、その校正・修正が可能な構造になっています。
つまり、高精度・高額なゲージであっても、1年以上校正処理をされていなければ、普通のゲージと変わりない事をご理解ください。
  
従って、高精度・高額なゲージの使用を検討するよりも、全く同じエアゲージを 2個購入する事の方がベターです。2個が 全く同じ計測値を表示すれば良く、仮に 多少異なった計測値であっても、それを記録しておけば、通常使用するエアゲージの校正用ゲージ&スペアゲージとして使えて、空気圧測定のリスクを減らせます。
実際、私も、同じメーカーの製品から、通常使用分として 2個、校正用として 1個 購入して使用しています。

 

3. エアゲージ の 形状
    
アゲージの形状は、各メーカーそれぞれに特徴があり、人によって好みが大きく分かれる点ですが、エアバルブに当てる部分から計測センサーまでの距離が短いタイプを勧めます。
ゲージによっては、ホース状に長く伸びているタイプもありますが、タイヤ内の空気量(エアボリュームとも言います)が少ないオートバイ用タイヤでは、計測時にロスが出易くなるからです。

 

* * * * 以上、空気圧についてでした * * * *

 


※ 参考までに、セッティング講習で行なった “ エア セッティング ” について、参加した人からの感想文を紹介します。

【 セッティング講習・感想文 】 ( タイヤ空気圧調整編 )
http://gra-npo.org/publicity/impress/2017/20171009_imp.html

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2019年10月 1日 (火)

フロントフォーク内のエア調整について


【 質 問 】

雑誌とかネット記事で、バイクを立てた状態でフロントフォークのキャップを開けて、中のエアを抜くと良いと書いてありますが、実際はどうでしょうか。
  
意見がアドバイスをもらえると助かります。.
 
 

 
【 回 答 】

フロントフォークの調整・セッティングの事で質問をくださり、誠にありがとうございます。
  
フロントフォークの調整・セッティングは、手で直接感じられる部品ですから、ライダーにとってとても大切な調整になります。
実際、私も 1980年代頃は、車体を直立させた状態で、フロントフォーク内のエアを抜いて、大気圧と同じにする調整を多用していたので、その利点はよく分かります。フロントサスペンションの初動が優しくなり、操縦性が高くなり、キビキビ感も増した様に感じる調整です。
  
ですから、そういう目的と合っていれば、車体を自立させた状態(1G時状態)でも、ライダーが乗車した状態(1G' 時状態)でも有効な調整です。。

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    *   *   *   *   *   *   *   *   *


ただ、同時に幾つか注意点も書き添えます。

1. フロントフォーク内エア圧は、走行数キロ程度で上昇します。
    恐らくフォークオイルが、フォークの伸縮作動時に霧化を起こして体積変化が生じ、
    エア圧の上昇という現象になっていると推測されます。

2. 仮に、霧化によるエア圧上昇状態のままエア抜きをした場合、時間経過で液化した時
    には大気圧以下になる可能性があります

以上の現象から、調整・セッティングは、条件設定などを考慮して絞り込んでおかないと、常に同じ変更にはなりません。
また、現行車両の場合、1980年代車の様にトップキャップにエアバルブ装着はなく、上ヨーク(トップブリッジ)のフォーク固定ボルトを緩めてから行なう必要があるなど、手間がかかる他に、固定ボルトの締付けによる微妙なセット変更が発生する恐れもある事を考慮する必要があります。


以上、簡単ですが、フロントフォーク内のエア圧調整について、アドバイスとさせてください。
また、不明な点や確認したい事がありましたら、是非、またご連絡ください。

 

                                                 セミナー & クリニック 担当 : 小林 裕之

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2019年9月23日 (月)

< Q&A > コーナリング中、フロントタイヤが重く感じて ・・


【 質 問 】

( 前略 )
走行練習ができる講習会に参加した時、バンクさせてコーナリング中にフロントタイヤが重く感じました。 そして、バンクさせたままアクセルを開けたら、フロントライヤがまるで浮いたように感じて怖い思いをしました。
どんな調整やセッティングをすればよいでしょうか?
( 中略 )
ターンは左右で差はないように思います。 そのターン中にフロントブレーキを使うのは怖さがあります。
リアサスペンションの調整をするべきかなと考えていますが、どうでしょうか。。
 
 

【 回 答 】

練習走行中、バンクさせてコーナリングしている時に感じた事について、問い合わせをください、ありがとうございます。また、その時の様子を事細かく確認して、色々と原因を検討されている様子に、オートバイとの良い関係を築きたい気持ちに共感しています。
  
では、今回の問い合わせの内容に対して、私なりの知識を基に参考になりそうな事をお伝えしますので、是非、一度ご検討ください。

 

1. 質問では触れてありませんが、フロントタイヤの空気圧不足や フロントタイヤの異常摩耗などが無かったとすれば、フロントサスペンションの設定が適切な状態になっていない可能性が大きく、アクセルを開けていなコーナリング中の挙動だという事から、リアサスペンションの設定等の関与は薄いと思われます。
  
2. ターン中に、フロントタイヤ が重く感じるという事から、フロントタイヤの方向安定性が失われて、タイヤがバンク方向へと必要以上に回りこもうとしている為の様に思われます。 その大きな要因は、ターン中の車高が低過ぎて、方向安定成分の トレールが不足しているためだと思います。

  

現状のフロントサスペンションの内容やセッティング状態は分かりませんし、トレッドエンドの “ 摩耗痕 ” の確認もしていないので、はっきりとした原因を特定する事はできませんが、上記の内容のアドバイスは有効だと思います。
  
フロントタイヤに働く力や、トレールの働きなどについては、下記の通り、一通りの説明をお届けしますので、この機会に一度 ご覧になってください。
   
ありがとうございました。
  
 
 
* * * * * * * * * * * * *
  
 
質問にあった[ バンク中の、フロントタイヤの不安定感 ]は、「 トレール(量)」の不足が原因になっている場合が多く、特に 30 ㎞/h 以下の低速域では顕著に発生します。追加の説明として、「トレール(量)」に関する資料を届けますので、この知識を元に、一緒に 解決策を考えていきましょう。
 
 
『 トレールという考え方 』

「 トレール 」とは、フロントタイヤ の “ 方向安定性 ”( タイヤを、向いている方向へと進ませる力・要素 )を支える大切な要素の一つです。 特に、速度が低速の時と、バンクさせてターンをしている時に重要な働きをします。

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上図は、オートバイでは一般的な フロントサスペンションの形式での 「 トレール 」です。 タイヤの接地面よりも前方に、ステアリングの回転軸と路面との交点があるようになっていて、その二つの距離が トレール(量)です。
この「 トレール 」があるから、特に低速走行時、フロントタイヤは安定します。(方向安定性がある)



『 変化するトレール量 』

上図の様な フロントサスペンション ( テスコピック形式と呼ばれています )は、サスペンション の動きによって 「 トレール量 」の大きさが変化します。
 
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上図の 左側は 乗車している時( 1G' 時と呼びます )の トレール量で、右側は ブレーキを強くかけて大きく縮んでいる時 ( 残ストローク時 と呼びます )の トレール量です。
  
こういう風に、運転の仕方によって 「トレール量」は いつも変化しているのですが、この特性があるからこそ、ライダーは フロントタイヤ の “ 方向安定性 ” をコントロールしやすくなり、直進する場面、ターンする場面など、状況に合わせて 自在に 走行性能を引き出せるのが、このサスペンション形式 ( テレスコピック形式 )の美点の一つで、「 トレール量 」を 自在に変化させられるという優れた特性があるこそ、一般車だけでなく レースの世界でも 50年以上 採用されているのです。
 
 
 
『 旋回モーメントとトレール量という考え方 』
  
では、直立している時ではなく、バンクさせて 旋回 している時、フロントタイヤ に働いている 力や要素を考えてみましょう。 特に、低速で タイヤの回転数が低く勢いが少ない状態で考えてみます。( タイヤ・ホイールの回転モーメントが小さい時 )
 
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バンクしている時、タイヤの 接地面中心は、バンクしている側へとずれているので、その “ ずれ ” の分だけ、タイヤ全体を バンクしている向きへと 回転させようとする力 (モーメント)が働きますが、そういう場面で、「トレール」はタイヤの “ 方向安定性 ” を保つ様に働き、バンクしている向きへと巻き込む様に働く力(モーメント)を 打消し、バランスさせる大切な力・要素です。
  
つまり、バンク中させた ターンの場面では、旋回力(旋回荷重)によってサスペンションが 縮み、「 トレール量 」が減り、方向安定性が減り、旋回性が増しているのですが、そんな場面でも、特に低速時には、 「トレール量」は安定を保つために 最低限以上の大きさを保つ必要がある事が分かります。 ( これが、安定限界トレール量という考え方に繋がります )
   
30 km/h 以下の低速でターンをしている時、それも 大きな荷重によって サスペンションが大きく縮んで時、しかも 深くバンクさせて タイヤに大きな旋回モーメントが働く場面には、「 トレール量 」が十分に残されている事が大切です。
  
が、フロントサスペンション の 状態や、整備や調整の結果によって、ターン中に必要な 「 トレール量 」が確保されていない事が 珍しくなく、そういう車両での ターン、特に低速域での ターン の場面で、フロントタイヤ の安定性が損なわれ、ライダーに不安感を与え、危険な状況に陥っている車両は少なくありません。
これが、“ 足つき性向上 ” と謳って 低車高化 させている車両の危険性であり、フロントサスペンション の 整備や調整をする時、一番気をつける点の一つです。
   
だから、2番目の図で示した様な 「 残ストローク量 」の管理は、整備や調整を行なう場合に気を付ける必要があるのです。



『 バンク角とフロントタイヤの自由度の関係 』

 

今回寄せられた質問に関係して、バンク走行時に フロントタイヤ に 働いている要素を、もう一つ 紹介します。
 
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フロントタイヤは、バンク角によって、左右に向きを変えられる自由度が変わります。 直立時には 最も大きく、極端に深くバンクさせた時には 自由度は無くなり、ほぼ直進状態と変わりない 状態になります。
  
この 自由度は フロントタイヤにとって大切な要素で、路面状況などに合わせて、常に最適な グリップ性能を発揮させる為に、フロントタイヤは 常に左右に小刻みに方向を変える必要があるのですが、極端に深いバンク角の場合には、必要な 自由度が奪われます。
  
その様に 深いバンク角で走行する場面でも、安定した コーナリング性能を発揮させる為に、「 トレール 」によって安定性を保つ大きな役割をしているのですが、仮に、サスペンションの整備や調整によって 十分なトレール量が確保されていない場合、バンク中、フロントタイヤは 巻き込ませる旋回モーメントと バンク角によって 巻き込めない要素とが 拮抗し合っている状態に陥ります。
今回、質問を受けたような現象は、この様に拮抗した状況が発生している可能性が高いように考えています。
   
その 力の拮抗によって、フロントタイヤは トレッドエンド部(エッジ部)で 路面に強く巻き込まれる様な力を受け続け、重くも感じられ、自然に 速度も低下します。
その状態で アクセルを開けると、フロントタイヤ に掛かっていた荷重が一気に減り、拮抗による巻き込みが解消され、瞬間、フロントタイヤが路面から離れる様な作用を受けたのが、今回の質問の状況だと推測した次第です。
 
 

       * * * * * * * * * * * * *
   
   
以上の理由によって、残ストローク量の確認と、トレッドエンド部の “ 摩耗痕 ” の確認を まずは お勧めします。
また、それらの状況をご連絡下されば、その情報を活かして 次のアドバイスや知識をお届けしたいと考えています。
  
では、良きオートバイとの日々を過ごし、楽しんでいきましょう。
 
 

    * * * * 関連する情報の掲載サイトです * * * * *


『 トレール・コントロール ライディング 』
http://gra-npo.org/lecture/ride/trail_controll/trail_con_ride_1.html
   

『 タイヤから診る、ライディング 』
http://youkaidaimaou.hatenablog.com/entry/2019/09/18/232348

 

 
 
 

 

2019年9月17日 (火)

Z1000、 サスペンションの減衰力調整は、何クリック目?


【 質 問 】

2015年式のカワサキ Z1000 に乗っていますが、サスペンションの減衰力の調整方法がよくわかりません。
フロントサスペンションは右側フォークに伸びと縮みの減衰力調整がついて、左側にプリロード調整がついています。
リアサスペンションはプリロード調整と伸び側の減衰力調整があります。
   
普段使う場合、何クリック目にすればいいでしょうか。
 
Web1000_z1000

【 回 答 】

はじめまして、問い合わせの質問をくださり、ありがとうございます。
   
さて、サスペンションの減衰力の調整については、長年に亘って開催してきた『セッティング講習会』でも、一番自信を持って最適な調整を行なえる事の一つです。
  
ただ、オートバイのセッティングは、サスペンションのプリロード調整を始めとして、ライダーの体重や体格、経験や車両のコンディションに合わせて行なうものなので、車種ごとの推奨値は無い事を最初にお伝えします。
  
最適な調整方法については、私共が開催している 『 整備・セッティング セミナー 』か、『 ライディング・セッティング クリニック 』へ来場される事をお勧めします。
また、「 誰にもできる、最適な減衰力調整方法 」(仮称)を 公式Webサイトで発表する予定ですので、是非、ご期待ください。
  
最後に、紹介した イベント の案内と、そのイベントで 減衰力調整を行なった人の「感想文」を紹介しますので、参考にしてください。
  
ありがとうございました。

 

  * * * * イベント紹介 & 「 感想文 」紹介です * * * *

  
『 整備・セッティング セミナー 』
http://gra-npo.org/schedule/M%20&%20S_seminar/seminar_top.html

『 ライディング・セッティング クリニック 』
http://gra-npo.org/schedule/clinic/clinic_top.htm

□ 「 感想文 」。ライディング・セッティング クリニック 来場者から
http://gra-npo.org/publicity/impress/2019/20190908_imp.html

   
  
  

 

2013年10月22日 (火)

Ninja 1000 のセッティングについて ・・ (新車を買った彼女)その7

こんばんは、こばやし さん。

すっかりメールはご無沙汰しております。
   

【 質問文 】

さて、前後のタイヤがどんな感じで動いているのか、撮った動画がこちらです。

なんですが、

frontフォークのスプリングを弱くしたのも強くしたのも、みた感じ一緒の気がしました。

とりあえず、アングルとかこんなもんなのか、チェックお願いします。

 

ちなみにこの動画は、ハンドルの切れ込みが早く感じたパターンです。

   
【 回答文 】
 

こんばんは   キヨ さん

Youtube に 投稿した 動画 観ました。


この画像を見た限りでは、
「 フロントの車高が、リアとのバランスにおいて、高い設定になっている 」
と言えます。

・・ フロント と リア の車高のバランスが取れている場合には、前後一緒に
    バンク動作に入ります。

・・ ビデオの画像では、特に 1回目の画像では、フロントの入り(切れ込み)が
     リアのバンク動作に較べて、一瞬 早く 始まっています。

だから、フロントの車高が、 リアの車高との比較で、高目の なっていると
判断できるのですが、 リア の イニシャル設定は 最も イニシャルが低い
セット(仕様)になっていますか?

仮に、前後のバランスで 前後のタイヤの動きの変化を確認するならば、
フロントのイニシャル変更だけでは はっきりとと感じられないとすれば、
リア の イニシャルを最も高くして、フロントの イニシャル設定を 最も低く
すると、 現状よりも フロントに対して リアの車高が高くなる方向へと変化
します。

一度、その変更が可能ならば、試すのは 良い経験になります。

      *    *    *

また、ビデオ撮影ですが、次に 撮影の機会があれば 次の点を改善点として
検討をお願いします。

○ 撮影範囲は、上は  腰 辺り 、下は 路面 を 基本にすると、もっと 車両の
     動きが はっきりと判ります。

○ 今回の撮影時は 逆光気味の 環境になっているように思いますので、
     順光にした方が  タイヤ や 車体各部が よりはっきりと確認できます。

左右のアングル設定は 最適です。


GRA    小林
 

< 以前の質問と回答文 >

               ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その1
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その2
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その3
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その4
               ・・
  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その5 >    
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2012年12月24日 (月)

Ninja 1000 のセッティングについて ・・ (新車を買った彼女) その6

こんにちは  こばやし さん。

パソコンが不調だそうで(不調を通り越した?)、ヤキモキされていることと思います。

今回も自作されるのですね。いろいろ規格やらなんやらで、相性とか分からないし
作るのって気を使います(小林さんは機械に(奇怪?)強いから大丈夫!)。

私はもう組みあがったパソコンを使うようにしています(HPのOSしか入ってないやつ)。
スペックにこだわらなければ、結構安いです。

少しでも早くPCの環境が整いますように。。。。念じておきますっ!

それで、
昨日はそんなPC環境が整わない中、返信をありがとうございます。
   

【 質問文 】

さて、車高が「高い」と「低い」は・・・・・・

ライダーが乗っていない状態のことではなくて、
ライダーが乗車した時の車高の変化のことなのですね!!

勘違いでしたらスミマセン。

私はてっきり(←「てっちり」みたい。)フロントのバネを縮めると、あたかも
フロントサスペンションがリアルタイムで縮まっていくのかと思いました。

・・・・でも、縮めてるのにどうして縮まらないんだろう?


スッキリしました♪

でも、またすぐに疑問が沸いてくる予感がします。

雑誌とかたまに読むと、いろんなサスセッティングの事について書いてあります。
それをマネして同じようにやってみた・・・というブログの記事も多くあります。
それでいいのかなぁ?と思うのです。

実際に自分で考えてやってみないと理解が薄いということを最近身にしみて
感じております。

あと、小林さん、ひとつだけ・・・・。← コロンボか!?

フロントのスプリング、Ninja1000の場合は15回転できるのですが、
左は15回転ぴったりなのに、右は15回転と4分の1回ります。
これは、許容範囲なのですか?

カワサキに電話してもいいのだけれど・・・。

どうしてそんなことを尋ねるのかというと、
バイクが手を離すと右に寄っていくのです・・・・・・。
まったく左右対称のバイクなんてないとは思うのですが。

なんか・・・・ぼーっとしてると気づかないことも、向き合うと
気づいてしまう今日この頃。

週末、なかなかゆっくり出来ないとは思いますが、
時々リセットして休んでくださいね。

   
【 回答文 】
 

こんばんは キヨ さん

先月 メールを頂戴していながら、当方の PC君がダウンしてしまった事もあり、
返信が大変に遅くなり申し訳ありません。

   *     *    *    *

では、未回答の件について、以下の通り回答しますので、また不明な点などがあり
ましたら、気兼ね無くご連絡下さい。

1. イニシャル調整幅が 左右で異なるが ?

メールでは、右と左のフォークでは、イニシャル調整用スクリュー(ノブ?)の調整幅が
1/4 回転異なっているとの事ですが、その程度の差は “よくある事” として受け止める
方が良いと思います。

工業製品にツキモノの “ 公差 ” とか “ 許容範囲 ” という表現も出来ますが、元々
さほど精度の高い工作を行なっている箇所ではないので、カワサキ へ 電話しても
クレームにもならないと思います。

肝心な事は、最も 緩めた場所から 何回転させているかを記録して、左右でその
調整値を揃えておく事です。

( 蛇足ですが ・・ イニシャル調整スクリューのねじのピッチが 1.25 ㎜ だとすれば、
    スクリューを 1回転させると、イニシャル量も 1.25 ㎜ 分だけ変化します。
    同様に、左右で異なる調整幅の 1/4 回転分は 0.3 ㎜ となりますが、肝心のスプリング
    の長さは 左右で全く同じではありませんし、0.3 ㎜ 以上 異なっている事は普通です
    から、調整幅が左右で異なる事に神経を使うのはさほど意味の無い事になります   )


2. 手を離すとオートバイが右に寄っていくが ?

前記の説明の通り、フロントフォークの イニシャル調整幅が左右で異なる事が原因で
オートバイの直進性に大きく影響する事はありません。

( これを確認するには、わざと 左右の調整を大きく異ならせて走行してみると判ります
     左右の イニシャル値が 大きく異なっていても、通常の調整幅程度では、その違いは
     きっと感じられないでしょう )

では、なぜ 直進しないのかを説明します。

それには色々な要因が考えられますが、例えば ○ 走行路面が左右方向に勾配がある
○ 前後タイヤが摩耗などでその左右の形状が異なる   ○ 横風が吹いている
○ オートバイ および ライダー の 左右の重量バランスが崩れている  ・・・ etc
については、あまりにも当たり前の事ですから、ここでは取り上げません。

ここで問題にする事は 「 オートバイの不正確な組み立て 」についてです。
別な言い方(表現)をすると、「 アライメント の調整 」が出来ていないという事です。

   *    *    *

アライメント を 人間の身体の事に置き換えれば 「 整体 」です。
つまり、正面から見て、背骨は上下にまっすぐにあり、鎖骨(肩)は 左右対称に伸び、
股関節以下の各関節も 左右対称にあるべき位置に収まっている事が大切で、そうで
ないと 筋肉疲労を覚えたり 動作が機敏で正確に行なえない事はご存知の通りです。

人間の場合と オートバイの場合も同じです。
オートバイの整体が取れていないと、どちらかに偏って走行しますし、ターン(バンク)
も 左右で特性が異なり、そのまま放置すると タイヤの編摩耗 は 当然発生しますし、
整体の狂いで関節にダメージを受けるのと同じで、オートバイ各部の部品にダメージが
およびます。

しかも、問題なのは、オートバイは 組み立ての際に きちんと整体(アライメント)を
調整されずに出荷されている事で、販売店でも その調整を行なっていない事です。

そのため、本来ならば 前後のタイヤの中心は 1本の線上になるべきなのですが、殆ど
のオートバイは そうなってはいません。
また同様に、左右のフロントフォークは 前後方向から見て平行になるべきですし、
横方向から見ても平行になるべきです。

これらの アライメント(整体)を取る作業は さほど難しい作業ではありませんので、
機会があれば 一度 トライされる事をお勧めします。

  *    *    *

Q1.  「 直進時に、ハンドルが 左右どちらか片方に僅かに切れてませんか? 」

・ ・ この様な場合には、前後のタイヤが (1本の線上に)整列できていないか、
          フロントフォークが 横方向から見て 平行ではない可能性があります。
                                                                ( ねじれている )


Q2.  「 左右へのターン(バンク)で、感触や特性が違って感じる 」

・ ・  この様な場合には、前後タイヤの整列や フロントフォークのねじれ、タイヤの
          編摩耗 の他に、主要構成部品のネジの締め付けトルク(力)が左右で異なる
          などが考えられます。

・ ・ この左右で感触が異なる現象は珍しい事ではなく、殆どのオートバイにある事
          ですが、オートバイのアライメント(整体)の狂い という概念は普及していな
          いので、殆どのライダーは “ 自分の腕のせい ” と 捉えているのが現状です。

          どんなオートバイでも、きちんとアラメイント(整体)を調整すれば、左右の
          ターン(バンク)の 感触は 殆ど同じになるものです。

   *     *    *    *

今回の アライメント(整体)は、基本的な整備項目の一つです。
アライメントなどの 主要な整備を行なって、本来あるべき姿にした後で ライダーに
合わせる “ セッティング作業 ” を 行なう事が最善です。

ですから、車両を購入した場合、それが新車であっても、一旦 主要な部品を分解して
から、アライメント や 締め付けトルクを 調整しながら組み立てる事が とても大切な
事で、実際に 私も行なっています。

そして、アライメント調整 や トルク管理の作業は、定期的に 行なっていました。
というのも、人間であれば 整体の狂いは 自覚しやすいのですが、 オートバイはそうでは
ないからですし、実際に アライメントは徐々に狂ってしまうものです。


以上、今回は 深い領域に入ってしまいましたが ・ ・ ・ 理解できない事がありましたら
気軽に質問をお願いします。


GRA    小林
 

< 以前の質問と回答文 >

               ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その1
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その2
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その3
               ・・  <
Ninja 1000 のセッティングについて ・ その4
               ・・
  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その5 >    

 

< 次回掲載の質問と回答文 >

    ☆  【 Ninja 1000 のセッティングについて・・ (新車を買った彼女) その7
 

2012年12月 9日 (日)

Ninja 1000 のセッティングについて ・・ (新車を買った彼女) その5

こんばんは。

先だっては、どうもメールありがとうございました。
10回以上は読み返しました。頭が痛いです。

・・・ ( 中略 )

それはさておき メールを拝読して
土曜日に車高が高いと低いを、フロントのスプリングを縮めたり緩めたりして、
低い速度でターンしてみました。

車高が高いと、なんか低速で走ってるときもなんだかフラフラし気味で、接地感が薄く、
ハンドルも当るところまですぐに切れてしまって
ん~・・・・・なんだか、わざわざ休みの日に乗りたい気分にならない、そんな感じ。

時間がなくて車高が低いと
まったりしてるけど、別に違和感なくて、これでも、アリかなぁ~という程度でした。

土曜日は時間がなくて、車高が高い状態の映像しかとれなくて、
でも、見ても、よく分からないのです。

それで、質問の第2弾です。

~1~
実際に車高調整をするときの、フロントのスプリングの位置は、サービスマニュア
ルの初期値で作業を始めるのですか?

ちょっと今はスプリングを弱くして乗ってますが(←意味もなく)、
その状態で車高調整をしても良いのですか?

~2~
一気にバンクさせるとは、どんな感じで?すか?
普通に曲がる程度の感じでいいですか?

それとも、フリーハンドっぽい意識で体をイン側に入れて、バイク任せな感じですか?

90度くらいのターンなのか、180度ターンなのか、45度くらいでいいのか。

どんなんでも良いですか?

~3~
調整前途の映像とは動画のことですね?
と、すれば、今の状態で走った前後タイヤの状態と、車高を調整したあとの状態、
最低2つってことですね。
(場合によっては、調整した都度ということですね)

バイクの画像とは、車高調整前後ではなくて、仕様が分かる程度で良いでしょうか?

  ・・ ( 後略 )
 

  
 
 
【 回答文 】
       

こんばんは  キヨ さん
   
いよいよ 師走になりましたね。
きっと、キヨさんのお仕事も サンタさん並みに忙しい月だと思いますが、どうぞ
Ninja 君との 楽しいお付き合いを 生き甲斐にして 乗り切ってくださいね。

   *    *    *    *

では、 Ninja 君と もっと親密な仲になるためにも、寄せられていた幾つかの
質問に答えていきますので、ぜひ 参考にしてください。
 

【 イニシャル調整の基準は? 】

Q1.  イニシャル調整は、サービスマニュアルの初期値を基準にするの ?

そういう方法・考え方もありますが、私はお勧めしません。
というのも、サービスマニュアルの初期値は、この場合には メーカーが想定した
平均的なライダーや荷物の重さや 使用環境での 推奨値 だからです。

Ninja 1000 は、本来 大柄な ライダーが二人乗車で、荷物を積んで 高速巡航
走行を想定して設計されていますので、50 ㎏にも満たない人が 一般道を走行
する場合には メーカーの 想定中心からずれているからです。

今回の場合であれば、それらの事情を勘案して、イニシャル調整は 最弱 を基準
にして、そこから強める方向に 何回転 とか 何㎜ という具合に調整する方が
妥当だと思います。


【 確認走行時のバンクのさせ方は 】

Q2.  前後の 車高バランス調整の際、一気にバンクさせる具合は ?

一気にバンクさせる具合は、腕や身体に変に力を入れなければ、どんな具合でも
構いません。
ただ、セッティング作業は 常に同一条件での比較が大切ですから、いつも 同じ
具合の バンク(ターン)を行なう事が大切です。

ご自身で いつでも同じバンク(ターン)が出来る範囲で、“ 一気にバンク ” の程度
や角度を決めて下さい。
ですから、 180度ターン でも 90度ターンでも、45度ターン でも、その バンク を常に
再現する事を基準に選んで下さい。

ここで、感じるべき “一番に大切なコト” は、 ターン を開始した瞬間の 前後のタイ
ヤの ターンの入り方です。
   
ターン初期の 前後タイヤの感触を感じ取る事が大切ですから、それさえ感じ取れ
るならば、何度のターンであっても 一向に構いません。


【 セッティング確認用の動画撮影は 】

Q3.  動画映像は、調整性の前後で撮影を ?

動画映像は、前後の車高バランスを 確認するのに役立てるためですから、ターン
直後の前後のタイヤが一緒の画面に入っていて、その調整の前後の映像があれ
ば よ
り適切な判断が出来ます。

また、オートバイの画像は、ごく一般的な カタログ風の画像で結構ですし、スナップ
風の画像でも全く構いません。
また、イニシャル調整スクリュー(ノブ) や リアサスペンション など、文章中に出て
来る部品の画像もあると助かります。

   *     *     *     *

【 イニシャル調整による変化について 】

キヨさんが行なった イニシャル調整で、最大のイニシャル量(荷重) にした場合と、
最少の両(荷重)にした場合とで、低速で確認走行した時の感想を知らせてくれた
のは、とても良い参考になりました。
 

「 車高が高いと、なんか低速で走ってるときもなんだかフラフラし気味で接地感が
   薄く、ハンドルも当るところまですぐに切れてしまって、 ん~・・・・・なんだか、
   わざわざ休みの日に乗りたい気分にならない、そんな感じ。」

「 時間がなくて車高が低いと、まったりしてるけど、別に違和感なくて、これでも、
   アリかなぁ~という程度でした。」

これらの感想は、今後のセッティングの進め方の大きな参考になるものです。

イニシャル量を増やして ( イニシャル調整スクリューを締めこんで )、走行した場合
に フロントの接地感が薄くなって、フラフラ気味になったのは、二つの要因があると
思います。

一つは、スプリングに対しての イニシャル荷重が大きくなったので、より敏感にフロ
ント廻り (フロントサスペンション & フロントタイヤ)が反応するようになった。

二つ目は、フロントの車高がリアに対して上がり気味になり、バンク(ターン)動作に
対して 一足早く反応する様になり、そのために バンク動作に対して期待する以上
に大きく フロントタイヤが切れ込み、思ったようなスムーズなバンクが出来なくなった。

逆に、イニシャル荷重を最弱にした場合には、フロント廻りの反応が 鈍感になり、
遅れて切れ込むようになった分だけ、緊張感を大きく持たずに走行できたと思い
ます。

   *     *     *

ただ、今回の一番のポイントは、 バンクをさせた瞬間に、フロントタイヤ の 反応が、
バンク動作に対して敏感に早目に出てくるのか、又は 遅れて反応するのかを ライ
ダーが 感じる事が 最も大切な事です。

だから、感想を読む限りでは、キヨさんはそれを 感じつつある、又は 感じている!
と 理解したので、今後のセッティング作業も スムーズに進められると思います。

セッティングで一番大切な事は、最適な調整値を知る事ではなく、バランスが取れて
いる状態とそうでない状態の違いを感じ(られ)る事ですから、大きな収穫です。

おめでとうございます。
 
   *    *   *   *
 
( イニシャル調整は フロントの車高を変化させ、それによる 車高バランスの変化を
   感じ取る感覚を掴むために行なった事です。
   現在の状態だけで フロントサスペンションの 最適なイニシャル量を決定させる
   必要はありませんし、
    もっと大切な調整を済ませた後で 行なうものだと理解して    もらえれば助かります  )
 
  GRA   小林
   

   
< 以前の質問と回答分 >

            ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その1
            ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その2
            ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その3
            ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その4
 
   
< 次に掲載した質問と回答文 >

            ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その6
 

2012年11月30日 (金)

Ninja 1000 のセッティングについて ・・ (新車を買った彼女) その4

【 お問い合わせ 】

こんばんは。

先だっては、どうもメールありがとうございました。
10回以上は読み返しました。頭が痛いです。

いろいろ詳しく書いてくださったので、なんとなく、作業の段取りがわかって来ました。

それで、いまさら聞き難いのですが「車高」ってドコのことですか?
GRA辞書にも載ってませんでした。

フロントのスプリングを強めるとどうして車高があがるですか?
縮めたら下がりそうな気もします。

それはさておき メールを拝読して
土曜日に車高が高いと低いを、フロントのスプリングを縮めたり緩めたりして、
低い速度でターンしてみました。

車高が高いと、なんか低速で走ってるときもなんだかフラフラし気味で、接地感が薄く、
ハンドルも当るところまですぐに切れてしまって
ん~・・・・・なんだか、わざわざ休みの日に乗りたい気分にならない、そんな感じ。

時間がなくて車高が低いと
まったりしてるけど、別に違和感なくて、これでも、アリかなぁ~という程度でした。

土曜日は時間がなくて、車高が高い状態の映像しかとれなくて、
でも、見ても、よく分からないのです。

それで、質問の第2弾です。


~1~

実際に車高調整をするときの、フロントのスプリングの位置は、サービスマニュアル
の初期値で作業を始めるのですか?

ちょっと今はスプリングを弱くして乗ってますが(←意味もなく)、
その状態で車高調整をしても良いのですか?


~2~

一気にバンクさせるとは、どんな感じで?すか?
普通に曲がる程度の感じでいいですか?

それとも、フリーハンドっぽい意識で体をイン側に入れて、バイク任せな感じですか?

90度くらいのターンなのか、180度ターンなのか、45度くらいでいいのか。

どんなんでも良いですか?


~3~

調整前途の映像とは動画のことですね?
と、すれば、今の状態で走った前後タイヤの状態と、車高を調整したあとの状態、
最低2つってことですね。
(場合によっては、調整した都度ということですね)

バイクの画像とは、車高調整前後ではなくて、仕様が分かる程度で良いでしょうか?

質問があまりのも初歩ですみません・・・・。
返事は急ぎません・・・・・・。今度はいつ出来るかまったく不明なものですから・・・。


今週はグッっと冷え込むらしいですね。

お風邪引かれませんように。


  
 

【 回答文 】
      

今日は、こんばんは  キヨ さん
   
早速に 試験の結果を報告してくれてありがとうございます。
離れた場所からの下手な説明をきちんと読んで、色々とやってくれている事が、
何よりも嬉しく感じています。
      
どうぞ、今回の質問や意見にも答えていきますので、これからもよろしくお願い
します。
   
 
*    *    *
 

今日は、最初にスプリングの話を聞いてください。
   
   
【 スプリングは、どういう具合に働いている? 】
      
スプリングとは、一般的に オートバイではコイル状に巻いてあるものが使われて
います。
リアサスペンションのイニシャル調整した時に、その近くでグルグルと巻いた金属
を見ていると思いますが、あれがスプリングです。
   
そのスプリングは、オートバイや人の重さを支えているのですが、その支える“力”
は どうやって発揮しているかを考えてみましょう。
 


【 スプリングを前もって縮めておくのは何故? 】
   
では、次の問題です。
   
『スプリングを前もって縮めておいてから、車体を支えてもらう』のと
『スプリングは前もって縮めないでおいて、それで支えてもらう』のと
どちらが 支える“力”は大きいでしょうか?
   
そう! わかりましたか?
   
前もって縮めておくと、その縮めるのに必要だった力より小さな力(または車体の
重さ)には全く反応せず、スプリングは縮みません。
   
逆に、前もってスプリングを縮めないで取り付けておくと、小さな力でも縮むので、
車体の重さ分の全てに反応して、大きく縮みます。
   
これが、【イニシャル(初期荷重)】による変化です。
   
 
【 スプリングの選択と初期設定は大切です 】
   
車体を支えるためには、その重さに合った強さ(スプリングレートといいます)のスプ
リングを選ぶ必要がありますが、それとは 別にどの位の重さ(力)から支えてもらう
ようにするか? という設定も大切です。
   
最初に、リアサスペンションのストロークが、乗車時(1G’)に全体の 1/3 になるよう
に イニシャル調整を! と伝えたのも、スプリングに どの範囲の重さ(力)を支えても
らうのかを調整するためのものです。
   
(決して、車高や足つき性のためではない事は理解してくれた通りです )
   
   
  *    *    *
 
では、出された質問に答えますね。
   
イニシャル(初期荷重)を小さくしておくと、最初にスプリングを縮めておく力が小さく
なり、車体やライダーの重さがかかった時に、イニシャルが大きい時よりも 大きくは
縮む現象になります。
   
これが、リアのイニシャル量を小さくした時に足がつきやすく感じた事、リアの車高が
下がった事の原因です。
 
フロントのスプリングも、リアのスプリングと同じく、縮めようとする車体の重さに対抗
して支える力を発揮します。
ですから、リアの場合と同じく、フロントもイニシャル量を少なくするとフロントの車高が
下がる現象に繋がるのです。
   
どうでしょうか?
少しは 疑問は解消したでしょうか?
 
スプリングの理解はとても大切です。
今日の話のレベル程度までしか知らず、オートバイのセッティングを語るベテランラ
イダーのようにならないためにも、この基本的な性質や役割をしっかりと理解して、
大切なオートバイとの会話する力を高めていきましょうね。
   
今日は長くなりましたので、ほかの質問は後日回答しますので、よろしくお願いします。
   

   GRA  小林
   
 
   *     *    *    *


< 以前の質問と回答分 >

                      ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その1
                      ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その2
                      ・・  <Ninja 1000 のセッティングについて ・ その3
            

上記の回答文に続いて 更に詳細な説明は次回掲載します。

< 次回掲載の質問と回答文 >

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