カテゴリー「 【妖怪講座】整備&セッティングの基本」の記事

フロントスプリングデータ 見本 と 概論

   
オートバイのセッティングをする上で、エンジンを除けば、一番やっかいなのはサスペンションのセッティングです。
そして、サスペンションのセッティングで一番難しいのは “ スプリング ” の選定です。
 
 
【 サスペンションの本質 】
 
有名ブランドのサスペンションへ換装する人達の多くが誤解している事ですが、サスペンションの本質は “ スプリング ”(バネ)なのに、「 ダンパー 」(減衰装置)の切替段数の多さは本質とすべきでありませんし、まして 「ブランド名」や「金属光沢や塗装」は本質ではありません。
 
スプリング ごそが “ 衝撃緩衝 ” の主役ですから、本来ならば 自身の体重や体格、走行条件などに合わせて 適切な スプリングレート (バネ定数)の スプリング を選択する事が 最も重要な事です。


【 スプリングの選択方法 】
 
その選択方法は、フロント および リア サスペンションと共に、実際に装着して乗って確かめるしか確実な方法はありません。
 
その際、リアサスペンション の スプリング 選択は比較的簡単です。
適当と思われる 数種類の レート のスプリングを手配しておき、順次 比較試乗すれば 必ず ベストに近い レートのスプリングは 見つけられます。
 
ただし、フロントサスペンション の スプリング は 難易度が一気に高くなります。
何故なら、フロントサスペンション は リア 以上に 様々な要素が求められている上に、ライダー自身が 直接手でサスペンション からの様々な意思(多くは微振動で)を感じ取っていて、その大小や特性によって ライダーの 感情や身体に影響して、ライディング自体が左右されてしまうからです。
     Spring_spec_a20161013
機会を改めて解説する予定ですが、この表は 私自身が所有する フロントサスペンション用スプリングの内、一部のスプリングのデータです。
 
スプリングレートは、本来ならば スプリングテスターで計測するのが最善ですが、所有していない為、すべて 計算で求めた “ 概算値 ” です。
また、初期の レートから 二次レートへと変わる “ 変換点 ” も、私なりの計算方法による値であり、実際に装着して試乗する際の参考値になるものです。
 
では、いつか サスペンション と スプリングの話、特に フロントサスペンションについて解説したいものです。
 
ただ、その前に、「 安定限界トレール(量)」の理解が必要になりますので、それが最初になりますね。

では!
 
 

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リアブレーキ周り、基本的(?) 整備・アレコレ

 
人間も機械も、ストレスの少ない環境の方が良い働きをする。
ストレスばかりでは、一時は良く(?)ても、やがては壊れてしまう。

それは、オートバイも一緒だ。
一つひとつの部品は、あるべき正しい位置に収まり、
動く部品(可動部品)はストレス無く動くべきなのだ。

だから、オートバイを整備ではストレス除去が一番大切と言える。
そして、ストレスの最大手の一つがフリクション(摩擦)だ。
フリクションがあって良い部品はタイヤぐらいだから、
基本整備の殆どはフリクション除去作業だと言ってよい。
   
 
 
【 リア ブレーキ周りの基本整備 】

整備車両は、練習用に導入している ホンダVTR。

当然、定期的に ブレーキ液(フリュード)の交換やキャリパーピストンやスライディングピン等の清掃&給脂(グリスアップ)、マスターシリンダーの内部ユニット交換(通称:オーバーホール)は行なっているが、人間(ライダー)のブレーキ操作に対して、もっと繊細な反応・タッチが欲しくて行なった整備を記録する。
 
先ずは、VTRの リアブレーキ周りをステップホルダーごと車両から取り外す。
  20160508_web800 
VTRの場合は、一般的な車両の形式と異なり、ステップホルダーはスイングアームのピポットシャフト(軸)の固定を兼ねているから、少し大げさだ。
 
ステップホルダーごとに外したブレーキ周りは、以下の部品の構成だ。
  20160508_web800_03 
リアブレーキ周りを整備する際、煩わしくなるのが ブレーキランプスイッチへと繋がるコード(電線)だ。取り外してしまうのが普通だが、後で装着して、位置調整をするのが面倒(?)なので、今回は切断した。( 赤の丸印内 )
 
ここで判るのは、リアブレーキペダル  が取り付けられている ピポット(軸)部に、ペダルの適切な動きを助ける為の、固定用のサークリップが無い事だ。
 
右側への転倒歴がある車両の場合、固定用サークリップ部に大きな力が加わり、脱落する例は珍しくない。
当然、この車両も何度も転倒させているから、正しい位置決めの為に装着が必要だ。



【 フリクション除去作業 】

では、今回の整備の目玉、フリクション除去作業を紹介する。
 
リアブレーキペダルの操作で、最も無駄なフリクションが発生するのが、先ほど出てきた、ブレーキペダルを固定しているピポット(軸)部だ。
 
一般的な整備であれば、ピポット部の清掃&給脂(グリスアップ)だが、更にフリクション除去を目指して、ピポット部を鏡面研磨処理を施す。
  20160508_web800_05    
ブレーキペダルを踏み込んだ際、必ず部品同士が擦れ合う場所だから、デコボコした表面で擦れ合うより、鏡の表面に見える程に平滑になっている方が良いからだ。
  20160508_web800_07 
上の画像で赤い円の内にあるのが研磨後のピポット部。
同様に、ピポット部と触れ合う、ブレーキペダルの取り付け穴の内部も鏡面研磨処理をする。



【 その他の整備作業 】
 
今回、鏡面研磨作業が有効な他の箇所は、ブレーキペダルからマスターシリンダーへ繋がるロッド(押し棒)の固定部、そして そのロッドとシリンダーユニットが接する球面部だ。
   
同時に行なった一般的な整備作業、「 マスターシリンダー のオーバーホール」
  20160508_web800_04   
そして定番の作業、「 ブレーキキャリパー のオーバーホール 」の作業。
    20160508_web800_11   
これらの作業にもフリクション低減の工夫はあるが、それは次の機会に。
 
 
 
【 作業結果 】

作業開始時刻が夕刻で、撮影記録なども行なった為、テスト走行は翌週に。
 
が、指でブレーキペダルの操作をすると、確実にフリクションは減っている。
(指で)踏み初めは、余分な抵抗感無く、すっと動きだして、戻し用のスプリングの反力だけ。そして、シリンダーを押し始めてから実際にブレーキが利き始める迄の間がとても短くなっている。シリンダーを押す作業以外に、余分なフリクション(摩擦)で浪費される事が無くなったからだろう。
 
そして、実際のライディングで重要になる、ブレーキペダルを戻していく動きにもリニアに反応をしているから、テスト走行が楽しみだ。
 
 
 
【 備考 】

実は、リアブレーキ以上に、フリクション低減処理が効果的なのが フロントブレーキ周りの 鏡面研磨処理を含む基本整備だ。
その理由は、手の方が足での操作よりも何倍も繊細な感覚・神経系を備えているから。( この作業内容も、次の機会に ♪ )
   
ブレーキペダルのピポット部は 、転倒により必ず歪が発生するから、本来ならば 歪が最も少ない新品ペダルに交換して、転倒による変形を防ぐ為に、足で踏みこむ部分をオフロード車の様に可倒式へと加工するのが良いだろう。
 
最後に、切断した ブレーキランプスイッチ へのコードには、カプラーコネクターを新設したので、次回からの作業が楽になる。
   
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安定限界トレール量、知っていますか? ( その2 )

   
この講義の主題は 「安定限界トレール量」です。
 
それは、オートバイの理解だけでなく、ライディングやセッティングの理解にも大変に役立つ事です。
しかし、この大切な要素を正しく捉えようとせず、多くの専門誌は、昭和30年代から続く古い理論にしがみついている様に見えるのは残念な事です。

では今回は、「安定限界トレール量」はタイヤ自体が向いている方向へ進もうと(直進)する力、つまり「直進安定性」(方向安定性とも言う)との関係から解説します。
 

 
【 トレールと直進安定性の神話 】

オートバイの解説本や資料には、「トレール量が大きいと直進安定性が高い」とか、「アメリカンタイプのオートバイは直進安定性を高めるためにトレール量が大きい」などとよく書かれていますが、果たして、これは本当でしょうか?
   
構造を簡単にした図で考えてみましょう。
Trail_0002_web700aこれらの図は、台車などで使われる二種類の車輪です。
   
(A) の形式の車輪は、台車に固定された “ 回転軸 ” (この軸を中心にして車輪の向きが変わる)が車輪(車軸)の真上にあり、回転軸の延長と地面が交わる点と車輪の接地点が同じために、トレール(量)は 0 です。

一方、(B)の形式では、トレール(量)が常に確保されます。
そのため、(A) の形式では 車輪の向きが安定しませんが、(B)の形式ではトレールがついているので、車輪の向きはとても安定します。
これらは、実際の台車でも応用されている事で、真実の事実です。

しかし、オートバイの場合では、トレール(量)と「直進安定性」は 台車の場合とは異なるのも事実です。それを次の項で証明しましょう。
 

 
【 トレール(量)が 0 でも、直進安定性は確保している 】

では、同じ台車でも少し形を変えた (C) の形式を見て下さい。
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上図 (C) の形式では、トレール量は 0 ですが、キャスター角がついている為に、高い直進安定性が保たれています。
 
イメージとしては、自転車のホイールを棒を使って転がす “ 輪回し ”(タガ廻し)の直進安定性と良く似ています。
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つまり、キャスター角がつけてあれば直進安定性は保たれ、その場合にはトレール(量)は 0 でも真っ直ぐ進めるのです。

したがって、「アメリカンタイプのオートバイは直進安定性を高めるためにトレール量が大きい」というのは “ 神話 ” だと言えるのです。
 
 
< 雑考 >

・・ そもそも、比較的低速での走行が多い アメリカンタイプ が「 直進安定性 」が大切で、超高速で走る事が前提の レーサーレプリカタイプが 直進安定性 が少なくても良いという様な考えはどうでしょう?
   
・・ どんなタイプの車両であっても、「直進安定性」は一定以上確保されるべきですし、同様に「旋回性」も一定以上必要です。まして、普通の人が乗る一般車両であれば、安全性や実用性、快適性を高い次元で求められるので、尚更、車両のタイプに関係無く、「直進安定性」や「旋回性」は十分以上に保たれているのです。
 
・・ 違いがあるとすれば、その性質・特性・性格にあるのです。     *   


    *      *     *     *
 
次回(その 3)では、【 実は! オートバイには大切なトレール(量)】(仮称)という項目名で、自動車や競技用車いすとの比較を交えて、オートバイで必要なトレール(量)の役割を解説する予定です。

乞う、ご期待 です ♪

 

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「安定限界トレール量 知っていますか?」 執筆進行中 !

   
普段は全く意識していなくても、オートバイは走る。
間違った知識に染まっていても、オートバイは走ります。

でも、本にも書いていない様な、正しい知識が身に付くと、
ライディングやセッティングの正しい理解が見えて来ます。

言葉を選び、解説図を作成しつつ、現在進行中です。
   

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安定限界トレール量、知っていますか?


【 誤解と神話だらけのオートバイ 】

「 トレール量 」は、オートバイのライディング(運転操作)やメンテナンス(整備)、セッティング(調整)を行なう上で、最も大切な要素の一つです。
少なくとも、「 エンジン出力 」や 「 ハンドル切れ角 」、「 足付き性 」、「 キャスター角 」などよりもずっと重要と言えます。

何故なら、「 トレール量 」はオートバイの操縦安定性や旋回性、安全性や楽しさに、どんな場面でも影響を与えているからです。

しかし、専門書を読んでも「 トレール量 」については型通りの説明しかありません。

つまり、「 トレール量は、ステアリング回転軸の延長線と路面が交わる点と、タイヤの接地点の中心までの長さで、直進安定性とハンドルの復元力に影響して、トレール量が多いと直進性が高まり、ハンドルの復元力が強くなる 」というレベルで書いてあるだけです。

それは、オートバイの事を理解する立場から見れば、100点満点中 50点以下の採点になります。
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オートバイ雑誌ではそれ以上に酷く、「 トレール量 」の大切さを語らず、「キャスター角 」神話とも言える程にキャスター角に焦点を当てた解説が氾濫しまかり通っている状態です。

雑誌(ライター)曰く
「 前輪に荷重を与えて、フロントフォークを縮め、立ったキャスター角が前輪の旋回性を高め ・・ 」 とか、
「 フロントフォークの突出しを増やすと、キャスター角が小さくなり、フロント荷重による旋回性能が高まり 」などと、物理法則を無視してイメージのみで語り、多くの読者(ライダー)も同様な理解をしている程、オートバイを正しく理解して楽しく乗る事からは遠く離れている状態です。

 
トレール量、特に 安定限界トレール量は、オートバイを楽しく乗り、正しく整備するのに欠かせない大切な事ですから、同じタイトルで何回かに分けて解説をしていきますので、次回を楽しみにして下さい。

※ 図中の 「妖怪講座」は、GRA公式Webサイトの下記ページで確認ができます。
http://gra-npo.org/magazine/writing/guidance_wr.html



   
 

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フロントフォークは、二人三脚の如し

   
市販されている殆どのオートバイは、フロントタイヤ(前輪)を支える装置(サスペンション)として“ フロントフォーク ”が装着されている事はライダーの多くは知っているでしょう。(下図参照)
 
今回は、そのフロントフォークが人知れず抱えている「悩み」を紹介します。


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「 フロントフォークはフロントタイヤのために 」
 

“ フロントフォーク ”は、円柱状の長いパイプで構成されている装置です。
家具の“つっぱり棒”の様に伸び縮みする“ パイプ ”が2本で一組となって、“ フロントフォーク ”が構成されています。
 
そして、“ フロントフォーク ”の一番下の部分にフロントタイヤ(ホイール)が装着されていて、フロントタイヤの上下動をフォークの伸び縮みで支え、タイヤが地面から離れないように働いているのです。
 
それは、ちょうど“ 二人三脚 ”と同じです。
二人が息を合わせて足を動かしているのと同じです。

 

 
 
「 二人三脚のコツとオートバイ 」
   

二人三脚の“ コツ ”は、二人が歩幅を合わせて、同時に足を動かす事です。
オートバイのフロントフォークも同じで、左右 2本のフロントフォークが同時に、同じ方向に、同じ量だけ伸び縮みするのが大切です。
   
しかし、意外でしょうが、殆どのオートバイ(フロントフォーク)はきちんとそれが出来る状態ではないのです。
 

 
 

「 見た目は仲良しそうでも ・・ 」
   

フロントフォークは伸び縮みする装置ですから、2本のフォークの伸び縮みする方向は完璧に同じ(平行)になっている必要があります。
2本のフロントフォークの伸び縮みする方向が少しでもズレていると、お互いに動きに干渉し合って、スムーズに伸び縮みできません。
   
どんなオートバイでも、そのフロントフォークを一見した限りでは平行に見えても、実際には平行ではなくズレているのが普通です。
メーカーの組立て時の平行チェック作業は無く、車両(オートバイ)運搬時にはズレが発生する方法で車両を固定し、オートバイ販売店は平行チェックの概念も無いのが普通だからです。
   
けれど、そのズレがあっても、ほとんどのライダーは気にせず(感じず)走っているし、安全性にも大きな問題にはなっていない様ですが、機械(オートバイ)にとっては大きなストレスの原因なのです。
 
フロントフォークが動く度に、そのズレが原因で、フロントタイヤの上下動が阻害されたり、勝手に左右どちらかにタイヤの向きが変わっているのです。
 
そのため、右と左ではコーナリングの安心感が異なったり、走行ラインが左右のターンで違い、タイヤの減り方が右側と左側で違うという結果になるのです。

   


「 より良きオートバイライフのために 」

私は、オートバイで走行するイベントを数多く主催してきました。
そこで出会った数多くのオートバイを診てきた経験から言うのですが、フロントフォークは正しく平行に整える事を勧めます。
 
特に、ライディングテクニックを向上させたい人や、より良い状態のオートバイでツーリング等を楽しみたい人に勧めます。
   
フロントフォークが“ズレ”たままだと、それが原因によるオートバイのギクシャクした動きや、右と左とでターンの感覚(コーナリングの間隔)の違いなどを、ライダー側で補正しようとする操作を行ない、やがてはその操作が“ 悪い癖 ”として身についてしまうのです。
   
オートバイは無理やり操作するものではなく、最小限の操作で最大限の能力を発揮させてこそ、安全で愉しめるライディングになるのです。
そのためにも、フロントフォークを正しく平行に整備しましょう。
 


   

「 二つの平行、二つのズレ 」
 

フロントフォークの“ 平行 ”は二つあります。
一つ目は、フロントフォークを前方から見た時の“ 平行 ”で、二つ目は、真横から見た時の“ 平行 ”です。
   
一つ目のズレは、レースなどのメカニックなどでも良く知られているもので、フロントタイヤを固定している部分のボルトを緩めてから、フロントフォークを上下動(伸び縮み)させるとほぼ解消します。

   

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しかし、二つ目のズレはその作業では解消しません。
ここで、いよいよ、私が長年推奨している“ 妖怪棒 ”を紹介しましょう。
 


 
「 妖怪棒のススメ 」
   

その“ 妖怪棒 ”を使って、フロントフォークのズレをチェックしている様子を紹介しましょう。
   
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フロントフォークを真横から見ても判断し難いズレでも、“ 妖怪棒 ”さえあれば、ズレを拡大して簡単に確認できるので、正確に調整ができるのです。
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この調整方法については、後日改めて GRA の Webサイト・「 オートバイの基本講座 ・メンテナンス編」で紹介の予定なので、興味のある人はお待ち下さい。
 
または、GRA が開催するイベント・『 自由練習会 』に参加か見学に来れば、希望者には詳しく説明をしています。

   
   

GRA イベント『 自由練習会 』の案内
http://gra-npo.org/schedule/free-prac/free-prac_top.html
 

きっと、ライディングに悩んでいる人であればある程に大きな助けの一つになるでしょうし、これから変な癖をつけずに上手になりたいと願っている初心者・初級者にとっても大切な事の一つになります。
   
どうぞ、フロントフォーク(オートバイ)には「 悩み 」がある事だけでも覚えておいて下さい。


   

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セッティングの イ・ロ・ハ

  
「 セッティング 」 ・・ それは、密林の禁断の果実の香りする世界。
                                   正しい知識と感覚が無ければ迷宮の人になる。
 

ここで言う「セッティング」とは、もちろん(?)舞台作りや会談の段取りの事ではない。
オートバイ(車両)の各部を調整して、乗り味や切れ味(?)を変更する作業の事だ。
簡単に行なえる作業で馴染みのある世界だけど、意外にもその理論を正確に語れる人は少ない。

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【 セッティングの迷路世界 】

オートバイは四輪車とは違い、簡単にセッティング作業ができる箇所が数多くあるから、セッティングを少し施すだけで、乗り味や安定感、操縦性に大きな変化が現われるのが特徴だ。
 
だから、オートバイに乗る事を愛するライダーには関心の高い世界だろう。
かし、セッティング理論を教える講習会は殆ど無く、あるのは調整箇所の調整方法だけが簡単に書かれた書籍などがあるだけだ。
それでセッティングを正しく行なえるのだろうか。
 
いや、調整方法を知っているだけではセッティング作業はできない。

なぜなら、セッティング作業で一番大切な事は
 バランス  を取る事だからだ。調整を行なって乗り味が変化したとしても、車両のバランスを取る調整になっていなければ、オートバイの走行性能の限界が低くなり危険なだけだ。

この“バランス”とは、オートバイとライダーとのバランスであり
オートバイをバンク(傾斜)させた時にハンドル(フロントタイヤ)が自動的に切れ込むタイミングと角度のバランスであったり、アクセルを開けて加速する時のタイヤと路面とのバランスなどで、それら様々な  バランス  をきちんと取る事が「 セッティング 」で一番大切な事だ。

でも、“ バランス ”を取る事の大切さは伝えられず、セッティング作業に欠かせない
 バランス  感を体得する機会が極めて少ないため、ほとんどのライダーはセッティングの世界で迷い続けている。
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【 紹介されているセッティングデータはお勧めか? 】

よく雑誌やWebサイトの記事で、「 ○○○車のセッティングはこうだ! 」などときめ細かく「 セッティングデータ 」が書いてあるのを目にする。時には、 市街地走行用 ”“ 高速道路用 ”“ 峠道用 などと懇切丁寧にデータが書いてあったりするが、それらをそのまま真似て良いのだろうか?

そのまま真似て良い筈はない。

なぜなら、新車状態の同じオートバイでも一台一台で個体差があるから、例え同じオートバイであっても必要なセッティングの調整が違ってくる。
その上、ライダーが違うから体重や体格も違うので、オートバイとライダーとのバランスを取るのがセッティングだから、必要な調整量が異なるのが当然だ。

さらに、走行距離を重ねている車両では、車両のコンディションが変化しているのでセッティングで必要な調整量は変化するのは当然だし、オートバイで一番重要なパーツ、タイヤを変更していれば必要なセッティングが大きく変化しても不思議ではないのだ。

だから、雑誌やWebサイトなど書かれている事や「言い伝え」をそのまま信じて真似ていては、正しいセッティングは得られないのだ。

 

 【 セッティングのイ・ロ・ハ 】

NPO
法人GRAでは、1995年に『 セッティング講座 』を全国に先駆けて始めました。

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それから毎年の様に、セッティング講習をあらゆる機会に設けるなど、積極的に取り組んできて、セッティングのノウハウや知識、経験を数多く蓄えているので、それらを体系的に伝える実践的な能力も備えています。
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そんなセッティングの知識を、Webサイトなどを通じて広く全国のライダーへと伝えていく予定なので、どうぞ興味のある人は期待してください。

また、NPO法人GRAが企画開催するイベントに参加すると、セッティングのノウハウをその場で得られるので、悩んでいる人にとっては良い機会になるでしょう。
現在、開催を予定している『 自由練習会 』であれば、個人練習が基本のイベントだから、安全な会場で専用のセクションを使い、とことんセッティング技術を磨くのには最適な一日になる事に間違いありません。

< 自由練習会の案内サイト >
http://gra-npo.org/schedule/free-prac/free-prac_top.html

 

 【 基本的なセッティングの進め方 】

セッティングの基本的な進め方や考え方について、1998年当時から講義用資料として配布している資料を紹介します。

セッティングというと少し特殊な事を施す様なイメージがあるかも知れないが、その基本条件として正しいメンテナンス(整備)がされている事が大切です。
メンテナンスと言ってもオイル交換やタイヤの空気圧調整だけてはありません。
車体各部、部品各部でのメンテナンスが不十分だとセッティングに悪い影響を与えてしまうもの。


だから、資料の最初半分はメンテナンスの必要な箇所を表にしているので、ぜひ参考にして欲しい。


< 以下、セッティング講習会用の講習資料です >

Gra1 
Gra2

 

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ZX-6RR編 『整備&調整セッティング記録会』 の「通信ボ」は、ライダーの参考書 !

2月7日開催、整備&調整セッティング記録会の後、早速に街中と峠道で走行を繰り返して、感想文を送ってくれてありがとう! ございます。
 
内容を拝見すると、整備と調整で狙い通りの変化を実感できた点もあり、とても率直な感想文に感謝をしています。
 
ただ、その一方、当日の作業中に説明した事が正しく伝わっていない?と思える点が少しだけあるのです。 いえいえ! 普通の雑誌などでは一切書いていない事ですし、まして作業を進めながら聞き、時には判断を求めたりしたのですから、充分に説明が伝わっていなくて当然だと思っています。
   
ですから、この「通信ボ」で、今回の作業でオートバイの動きが変わり、信頼できる動きになった理由や原因の説明をします。その説明を通じて、オートバイの仕組みへの理解を深めてください。そして、次の“調整”の機会には、調整(セッティング)によってオートバイの動きや信頼感が変化するので、どうして変化するのかを少しでも解明できたなら、大きな“やりがい”になります。
   
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【 方向安定性の大切さ 】

先日、整備&調整の前に試乗させてもらった時、ZX-6RRで感じた事は「フロント(タイヤ)のマナーの悪さ」です。フロントタイヤが「僕は向いている方向へ、一人で行けるからね!」とは言わないで、何も言わず右へ左へと行ってしまうのに、「何? ちゃんと走っているだろ!」とでも言いたげな態度だったのです。
 
フロントタイヤが向いている方向へ自ら進もうとする力を“方向安定性”と言いますが、ZX-6RR君はその“方向安定性”が低速域で不足していると判断したのです。
   
方向安定性”が小さくなり過ぎて不足すると、フロントタイヤは向いている方向とは異なる方向へ向きを変えやすくなり、その“感触”をライダーは感覚の敏感な手を通じて感じ取るので、それが“不安感”を感じる一番大きな要因になるのです。
 
では、あの日にお話した事ですが、“方向安定性”を決める要素は何があるかを覚えていますか。
   
そうです!
一番大切な「フロントタイヤ空気圧」の他、「フロントタイヤ(ホイール)の回転による慣性力」(ジャイロ効果にも似ています)、そして「フロントタイヤの外径」ですね。(外径が大きいと方向安定性が高く、不整地を走るオフロード車が大径タイヤを採用している大きな理由です)
      
そして、当日も図を描いて説明したように、「トレール量」が大切な要素です。
2種類の台車の前輪で、その構造から「トレール量」が違い、そのために前輪の“方向安定性”に大きな差が出る事を説明しましたね。
   Trail_0002_web700   
この「トレール量」は、フロントサスペンションのアライメント(キャスター、ステムオフセット量、沈み込み量など)によって決まる数値(量)です。
   
Trail_0001_web700   
この「トレール量」は、加速や減速に応じて大きくなったり小さくなったりします。この変化によって“方向安定性”が変化するため、加速時には直進しやすくて、減速時には直進性が減り曲がり(旋回)やすくなるのです。(ZX-6RRや一般的なフロントサスペンション形式=テレスコピック形式は、全てこの特性)
    
特に、時速40㎞以下の低速で走行する際には、「トレール量」が“方向安定性”を大きく左右する要素になるので、一般道を走行する際には「トレール量」を適切な量に保つ事が大切です。「トレール量」が少ないと旋回する(曲がる)けど落着きが無く、恐怖感をライダーに与えやすく、多すぎると逆に常に安定はしていて、大きくバンクさせても曲がり(旋回力)が弱い特性になります。

・・・ 説明が長くなりましたので、ここで一気に結論を。

   
2月7日の整備&調整では、ZX-6RR君、フロント(タイヤ)の方向安定性が少なく感じたので、「トレール量」を増やすため、セッティングの一つの手段として、フロントフォークオイルを増量したのです。
   
フォークオイルの増量で「トレール量」は増やしたので、試走でその特性の変化の大きさを感じて、感想文の「普通のバイクになった」という言葉になったと思います。
   
しかし、“方向安定性”と“旋回性”の二つの相反する要素を、ちょうど良いバランスにさせるのがセッティングの本当の目的です。
現在の仕様は“安定性”の方向へ振っているので、フロントフォークオイルの量を変更して「トレール量」を変更して、バランスの良いポイントを探る作業を次回行ないましょう。
   

トレール量のセッティングは 】

先にも書いたように、加速や減速などの走行状態や乗車人数、平地と坂道などによって「トレール量」は常に変化しています。
   
この「トレール量」をどんな状態でも最適に保つセッティングの基本の一つが、「残ストローク量」の調整です。
「トレール量」は図解で多少は理解できると思いますが、実際のオートバイでは直接測定は難しいので、「トレール量」の変化と同時に変化する「残ストローク量」を測定して、その量を最適に保つ調整(セッティング)をするのです。
   
「残ストローク量」というのは、前回行なったので覚えていると思いますが、例えば時速40㎞ 以上の速度で走行中に急ブレーキして停車させ、フロントフォークが最も縮んだ時の場所(位置)の事です。
何故? 最大減速時の「残ストローク量」(最少トレール量)の測定と調整が大切かと言うと、どんな走行状態であってもオートバイは最低限の“安定性”を保つ事が大切だからこそ、急ブレーキ(最大減速)時を基本にするのです。
   
経験したので覚えているでしょうが、インナーチューブにタイラップなどを軽く巻いて装着して、急ブレーキした後でそのタイラップが移動した位置が「残ストローク量」です。

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次回の調整機会には、最初に「残ストローク量」の測定をして、前回の 20㎜からどの程度変化したかを記録します。
そして、その場でフロントフォークのオイル量を変更して、実際に試走して、「残ストローク量」を測定して、「残ストローク量」(トレール量)の変化でオートバイの特性がどう変化したか感じ取り、必要に応じてこの作業を何度か繰り返し、最適な「残ストローク量」を探っていきます。
 
現場でフロントフォークオイルを計量して増減する作業は、専用工具があるので簡単にできます。が、最適なバランス点を探り感じる作業は、その人の経験や感性、能力によって大きく左右されるので、次回でベストバランスが出せるとは思わずにいて下さい。
 
それよりも、フロントフォークオイルの量、たった 1㏄の変更だけで、オートバイの特性が大きく変わるポイントがある! という現実と理論を感じ取ってください。

 

【 整備と整体と調整 】

感想文の中で“整体”という言葉をたくさん使ってくれて、ありがとうございます。
   
きっと、オートバイに“整体”なんて、ほとんどの人は考えた事は無いでしょうから、とても良い刺激になっているでしょう。
ただ、“整体”とは、オートバイの部品を本来の正しい位置に整える事と、部品同士の間で溜まっているストレス(こり)を取ってやる基本的な整備作業です。
   
だから、“整体”を行なうと、人間の場合と同じですが、身体(オートバイ)が軽く感じられ、その動きも軽く感じられます。
   
でも、感想文の中で書いてあった特性の大きな変化は、きっと“方向安定性”の変更によって出てきたもの、と理解してもらえると嬉しいのです。

 

【 今後お勧めのメニュー 】

次回、整備の機会があれば、是非リア周りの整備をしましょう。
 
リアのホイールを外し、サスペンションユニットとスィングアームを外して整備をしましょう。
部品の清掃に始まり、ゴム部品の交換、グリスの交換、金属部品同士が触れ合う箇所への潤滑処理です。特に、リアホイールに装着されているハブダンパーの交換は気持ちの良い走行感を与えてくれると思います。

   
そして、それらの部品をきちんと組み上げた後で、前後のタイヤ(ホイール)のアライメント(整列)とりの作業を行ないましょう。
もちろん、各部のボルト・ナットはネジ山の整備をして、正しい順序で、指定トルクで締めていきましょう。

 

【 妖怪のひと言 】
   
どうぞ、次回の整備機会には、車体の清掃、特に主な整備予定部品周りの清掃・クリーニングをして来てください。
 
前回は各部の汚れがそのままだったので、清掃に時間がかかるだけではなく、床や工具が汚れ、良い整備環境とはいえなくなるのです。
   
『 歯を磨かず、歯医者へ行く者は ○○○ ですよ 』
   
どうぞ、手が届く範囲だけでも、ざっと汚れを落としてきてくださいね。
 

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セッティング講座 ・ リアの車高(調整)編 <その3>

 
では、いよいよ! 「スィングアームの垂れ角」の大切さ(作用)を図解を入れて説明をしよう。


これが理解できて、実際にセッティング(調整)へ応用できれば、間違いなく皆のオートバイは今よりずっと楽しく安全に走るようになるぞ。
だから、もし分からない説明や用語が出てきたら、コメント欄を利用して質問を送信した方がイイぞ。


【 オートバイを前に進めるのがスィングアーム 】

この講座の最初に、「 オートバイは、どうやって前に進むか、知っているか? 」と質問したが、「 スィングアームがあるから前に進む 」が正解じゃ!

では、それを下の図を使って説明しよう。

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リアタイヤ(ホイール)は、エンジンの力で回転する事は皆もよく知っているじゃろう。 でも、回転するだけでは前には進まんのじゃ。

実は、リアタイヤ(ホイール)は、その中心を 車軸(アクスル)という軸(棒状の部品)で固定されておる。
そして、リアタイヤ(ホイール)がエンジンの力で回転すると、その回転につれて車軸(アクスル)が路面と平行に前方に動く・移動するのじゃ。

ここまでは分かるかな。
では、次の図に移ろう。

20140723_a2_web550

路面と平行に前方へと移動する 車軸(アクスル)は、スィングアームという長い棒状の部品に固定されていて、そのスィングアームの前方はピポット(スィングアームピポット)という所でオートバイの車体に固定されとるのじゃ。

だから、リアタイヤが回転すると ⇒ 車軸が前方へ移動 ⇒ スィングアームも前方へ移動 ⇒ 車体も前方へ移動、という 具合にオートバイは走るようになっているのじゃ。
皆のオートバイも、電動バイクも、シャフトドライブのオートバイも、前へ進めるのは スィングアーム という大切な部品があるからなのじゃ。


【 効率良く進むための スィングアームの角度は? 】

2回前の講座で、「人力車」の説明したじゃろう。

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人力車の場合には、人が前から引っ張るから力の入り方が逆になるが、タイヤ(ホイール)と車軸、そして梶棒(スィングアーム)との関係はオートバイと同じじゃ。


では、人力車を引く場合には梶棒(スィングアーム)は水平(路面と平行)にする方が効率良く引けると書いたが、オートバイの場合も同じだろうか?

20140723_a2_web550_2先に出した図を見ると分かると思うが、オートバイを前へと押しているのがスィングアームだから、スィングアームは水平(路面と平行)になっていた方が良い! と考えるのが当然だろう。


【 スィングアームが水平の場合を考えてみよう 】

では、ここでスィングアームが水平の場合を考えてみよう。
下の図を見てほしい。
図の右側は オートバイが静止状態 (ライダー乗車時 = 1G'時)で、左側が エンジンの力でタイヤを回転させて加速した場合じゃ。

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発進直後(加速直後)は スィングアームは水平で効率良くオートバイを前進(加速)させるが、困った事に発進(加速)させると「荷重移動」という現象が必ず起きるのじゃ。
この「荷重移動」というのは、電車やバスに乗っている時、その加速や減速(ブレーキ)につられて、身体が前や後ろの方向へ力を受けるのと同じなのじゃ。

オートバイの場合にも、発進(加速)した場合には、オートバイ(とライダー)は後ろの方向へと力を受けて、その重み(荷重)も前から後ろへと移動(荷重移動)してしまう。
後ろ側へと荷重が移動してしまうと、オートバイにはサスペンションがあるから、サスペンションの働きで車体の後ろ側が沈み込むのじゃ。

車体の後ろが沈み込むと、スィングアームが車体に固定されとるピポット(スィングアームピポット)も一緒に下へと移動する。でも、リアタイヤ(ホイール)の中心の車軸(アクスル)の高さは変わらないから(ちょっとだけ変化するが)、結果としてスィングアームは“前下がり”になってしまうのじゃ。

一旦、スィングアームが前下がりになってしまうと始末が悪い。
エンジンの力で車軸(アクスル)が前方へと進もうとするほど、その力でピポットを下側へと押し下げようとするのじゃ。

効率良く前へと進めないのも問題だが、それ以上にオートバイの走行安定性を大きく損ない、乗っていても不安感が強く、タイヤのグリップ力を大きく損なってしまうのじゃ。
だから、スィングアームは水平の設定は無く、ほとんどのオートバイのスィングアームには“垂れ角”がついていて“後ろ下がり”になっているのじゃ。

( 加速時にリアサスペンションが沈み込む設定では、リアタイヤのグリップ力が発揮し難く、特にターン中の加速で転倒へと繋がる恐れがあり、ライダーも不安定感を感じます)

では、次回の講座では、最適な“垂れ角”について説明して、実際に皆のオートバイで「最適な垂れ角」にする調整方法を説明する。
また楽しみにしてくれ!

   

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セッティング講座 ・ リアの車高(調整)編 <その2>

   
前回の解説では、オートバイの「 スィングアームの垂れ角 」はオートバイにとって大切な要素(ジオメトリー)と書いたが、実は少し話をはしょり過ぎたようだ。
 
早速に、読んでくれた方から「スィングアームの垂れ角って・・? わかりません!」と指摘を受けたんじゃ。
 
いくら大切じゃ!と言ったって、「スィングアームって何?」と思っている人も居たじゃろう。
きちんと解説を進めんかった事をお詫びする。
既に言葉(用語)が理解できている人も居ると思うが、大切な所じゃから、もう一度説明させてくれ。
 
 
【 スクングアームって? 】
 
みんなの乗っている殆どのオートバイには、「スィングアーム」という部品が付いていて、その「スィングアーム」はとても大切な働きを任されている事から説明しよう。
 
Swingarm_1
 
上の図を見て欲しい。
「スィングアーム」という部品は、リアホイール(タイヤ)とオートバイの車体(フレームまたはエンジン)を結びつけている部品じゃ。
リアホイールが取り付けられている車軸(アクスルとも言う)と車体側のピポットの間にある部品で、上の図(CB1300SF)の場合にはアルミの地肌色(銀色)の部分じゃ。
 
その「スィングアーム」があるから、リアホイールは外れたりせず地面にエンジンからの力を伝えられるし、リアサスペンションの大切な働きが出来るのじゃ。
 
ぜひ、皆も色々なオートバイの「スイングアーム」を観察しておくれ。
色や形や大きさなど、オートバイによって色々と違っているけど、どのオートバイでも共通する特徴に気付く筈じゃ。
   
そう、「スイングアーム」は斜めになっとる。
リアタイヤの車軸(アクスル)は低くて、車体側のピポット側が高くなっとる。
これが、「スィングアームの垂れ角」と言って、ほとんどのオートバイに必要なんじゃ。
 
 
【 スィングアームの垂れ角の目的 】
 
では、もう一度、図を見ながら説明しよう。( モデルは、Ninja 1000嬢だ )
 
Swingarm_3
Ninja1000 の場合、スィングアームは黒いからちょっと見にくいが、リアホイール中心部を固定している車軸(アクスル)と、車体側でスィングアームを固定しているピポットを確認して欲しい。
その間にあるのがスィングアームだ。
 
では、実際にライダーにまたがってもらおう。
(※ 実際にライダーが乗車した状態=1G'時 で考えるのが基本じゃ )
Swingarm_4
 
この時、2本の赤色の線が交わる角度が“ スィングアームの垂れ角 ”なのじゃ。
赤色線の内、1本は スィングアーム(車軸とピポットを結ぶ線)で、もう一本は地面と平行の線じゃ。
 
この説明で、「スィングアームの垂れ角」の事はある程度理解してもらえたじゃろう。
それに、ほとんどのオートバイには 「スィングアームの垂れ角」がある事もわかってくれたじゃろう。
 
そこで、ワシから皆に質問じゃが、いいかのぅ?

質問 1.は、 「スィングアームに垂れ角がつけられている理由は?」
質問 2.は、 「スィングアームの垂れ角は何度でもいいのか?」
 
 
【 ほとんどの人が知らない垂れ角の重要性 】
 
実は、「スイングアームの垂れ角」(乗車時 = 1G'時)は、オートバイの走行時の安定性を左右する大きな要素で、その角度が適切に調整されていないと乗っていて怖く感じるばかりか、時にはリアタイヤのグリップが不安定になって転倒する危険性さえ大きくなるのじゃ。
 
しかし、そんなに大切な「スィングアームの垂れ角」なのに、その角度がつけられている理由や、最適な角度の求め方(調整の仕方)をきちんと解説されている本は殆ど無いし、ベテランライダーや熟練整備士でも正しく回答できる人は少ないじゃろう。
   
だから、質問の1.と2. の答えが分からなくても当たり前だし安心して欲しい。
そんな皆の為に、出来るだけ分かりやすく説明をしていくので、一緒に付いて来て欲しいんじゃ。
   
そうすれば、オートバイの事をもっと身近になって感じてやれるようになるだけじゃなく、以前に解説したリアサスペンションの「プリロード調整」のもう一つの大きな目的を知る事になるのじゃ。
   
ここで、最初に“プリロード調節の結論”を言っておこう。
「 プリロード調整は、スィングアームの垂れ角調整のために優先して行なうべきで、1/3調整は補足的に考えるべき 」
   
一般的によく言われている、リアサスペンションは乗車時(1G'時)に作動域の1/3の位置を基本に調整する、という事に反している様に聞こえるが、スィングアームの垂れ角の重要性を考えれば、垂れ角を適切にする調整を優先するのが当たり前だという事は理解できると信じている。
また、最適なスィングアームの“垂れ角”はライダーに合わせて一つしかなく、それ以上でもそれ以下でもオートバイは本来の能力を発揮せず、オートバイとの一体感は味わえないという事も理解できるじゃろう。
   
では、この続きは次項まで、楽しみにしといてくれ。
   
 

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