フロントスプリング交換 と セッティング ( その3 )
・・ 前回記事 『 花嫁スプリングの性格診断 』の 続編が今回の話 ・・
愛車・トラ君のフロントサスペンション、方向安定性が不足の “ 持病 ” を解決の為に、フロントスプリング交換を検討中だ。
前回までの話は、フロントスプリングはとてもデリケートな設計が必要な為、どの車両メーカーも車種専用設計のスプリングを作っているほど、とても多くの仕様や性格がある事まで説明をしたところだ。
『 方向安定性が足りないと 』
ライダーなら誰でも、低速走行の時、一度は怖い思いをした事がある筈だ。
行きたい方向とは違う方へオートバイが行こうとしたり、どちらへ行こうとしているか分からなくなったりした事がある筈だ。
そう感じる原因の多くは、フロントタイヤに “ 方向安定性 ” が足りないからだ.。
誰もが知っている通り、オートバイにとってフロントタイヤ(前輪)は進行方向を決める大切な役割がある。 もし、フロントタイヤに方向安定性が足りないと、進行方向をはっきりと決められず、ライダーはハンドルを通じて、フロントタイヤの不安感を感じるから怖く感じるのだ。
『 方向安定性を得るために 』
方向安定性とは、フロントタイヤが向いている方向へ進もうとする力であり成分だ。
そして、方向安定性の大きさは何で決まるかと言えば、以下の通りだ。
1. フロントタイヤの外径
・・ タイヤの外径が大きい程に安定する
2. フロントタイヤの回転速度
・・ 速度が高い程に安定する
3. バンク角
・・ 直立している時が一番安定、バンクさせる程に不安定に
4. トレール量
・・ トレール量が大きい程に安定する
※ その他、タイヤのエア圧、路面の摩擦係数 なども関係する
ここから、40 ㎞/h以下の低速で バンクさせて走る場合に “ 方向安定性 ” を守るには、 「 トレール量 」が大切だとわかる。
上の図の通り、「 トレール量」は どんなオートバイでも必ずあるものだ。
と言えば、「 だったら問題は無いのでは? 」と思うかも知れないが、それは違う。
「 トレール量 」は大きくなったり小さくなったり、いつも変化しているのだ。
変化は必要な事だけど、そこに悩みの原因があるのだ。
『 トレール量は、常に変化している 』
では、どんな時に「 トレール量」が変化しているかを図で説明しよう。
上の図の通り、フロントサスペンションが伸びた時はトレール量は大きくて、縮めば縮むほどに小さくなく事がわかる。これは現在のほとんどのオートバイが採用しているフロントサスペンション(テレスコピック式)に共通した特性だ。
フロントサスペンションが縮むとトレール量が小さくなり、方向安定性も小さくなるから 進行方向が変わりやすくなるのだ。
つまり、コーナリングを開始する際に軽くブレーキング、または開けていたアクセルをOFFにすると、荷重移動によってフロントサスペンションが軽く沈み、トレール量が減るから方向安定性も減り、向き変えがしやすくなるからスムーズにコーナリングを始められるのはこの特性があるからだ。
その上、コーナリングに入ればコーナリング荷重によって沈み込みが増え、更に旋回性が良くなり、コーナリング中にフロントブレーキを掛ければトレール量が小さくなり旋回性がもっと増すのだ。
こんな風に、トレール量が変化するからこそ旋回性が増し、バンクさせてコーナリングをする楽しさが味わえるからこそ、1950年代から普及し始めた「テレスコピック式」のフロントサスペンションが現在でも変わらず採用され続けているのだ。
(※ 四輪車サスペンションが変化・革新し続けているのと異なり、形式が基本的に変化していない理由は、ライダーが舵輪からのフィードバックを直接的に受けられる事と、トレール変化の特性がライダーのコーナリング感覚にフィットしているからだろう )
しかし、トレール量が変化するのは決して良い事ばかりではない。
最初に書いた通り、特に低速走行時に多いけど、オートバイ操作によっては「方向安定性」が足りなくなり、ライダーは怖さを感じたり楽しめなくなる原因に「トレール量」が関係しているのだ。
だから、「 最適トレール量 」や「 最適トレール量変化 」も忘れてはいけないのだ。
※ 次編では『 最適トレール量を確保せよ 』を掲載予定です。乞うご期待 !
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※ 専門的な用語は、『 GRA・用語解説辞典 』に掲載していますので、参照ください
『 GRA・用語辞典 』( http://gra-npo.org/dictionary/top.html )
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