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2012年6月 5日 (火)

VTR を買った彼 (その3)

   
それでは、ここで “彼”の事を簡単に紹介しておこう。
 
 
【 模範ライダーな彼 】

彼は、全国二輪車安全運転競技大会の有力選手として、県の代表として何度か鈴鹿サーキットで開催される全国大会に出場しているほど、オートバイの運転技術が高く、それなりにメカニズムについても知っている方だ。(・・ と思う )

実際、同じ車両でコーススラロームのタイムを彼と競った時、彼の方が早かった事もあったほどに腕は確かだ、(僕との比較だけど・・)

そんな彼だから、地元では“名士” だ。
地元の全国二輪車安全普及協会( 通称 : 二普協 )の役員の方とは顔が効くし、その関連から主だった オートバイ販売店や自動車学校の店長や役員の方、そして白バイ隊の面々とも知り合いだったりする。

つまり、一般的なライダー以上に模範的な立場の人なのに ・ ・ ・ 。
  
   
【 基本はノーマルを ・ ・ 】
 
Q. 「 小林さん! ハンドルは何センチアップしていますか ? 」
A. 「 ハンドルはノーマル位置のままだよ 」
    「 あの車両は、フロント荷重のバランス変えたらダメよ 」

Q. 「 プラグコードは、何を入れてますか? 」
A. 「 電装系の基本は導通の確認・確保が基本 」
    「 プラグコードは問題無ければそのままで、電装品の各端子部に
      接点復活剤を塗布して導通の確保をして、敢えてするならばアー
      シングをケーブル設置で確保するだけで十分だよ 」

Q. 「 フロントフォークは、何ミリつき出していますか? 」
A. 「 フロントの設定は、乗車時の車高を最適値に合わせる事が肝心
       だよ 」
    「 最適な車高値を求める前から、つき出しだけを考えるのはダメよ 」

Q. 「 フロントブレーキのキャリパーを、○○車のに変更しますが ・・ 」
A. 「 ノーマルのオーバーホールで十分よ 」
    「 微妙なタッチに応える仕様にするならば、レバーからピストンに至る
       まで、接触面の研磨や減摩処理、ゴムやフリュードの更新に気を
       配るべきだよ 」

Img_0140 ・・ と、 ここまで言っても相手(彼) は電話の向こう側。
果たして、こちらの意図を正しく受け留めてくれているかが全く分からない。

どうも、僕が“ノーマル” で乗っているという言葉が信じられないようだ。

しかし、“ノーマル” と言っても、新車で販売されている状態の事ではない。
車両を設計して実際に試作とテスト走行を繰り返して決定された仕様、車両そのものの“魂”が籠っている状態が“ノーマル”(基本/原型)であり、それが基本なのだ。
 
 
【 彼だけが特別ではない 】
 
確かに、彼の例だけに限らず、オートバイの良しあしは、エンジンの形式やブレーキの形式、サスペンションなどの仕様(スペック)で判断している人は多い。

その上、最初から装備されていた部品を “高性能を謳った” 部品へと交換する事で、車両全体の能力が向上するものと信じている人も更に多い。

タイヤに始まり、サスペンションユニット、プラグやプラグコード、ブレーキキャリパーやマスターシリンダー等など、オートバイ雑誌を開けば高性能を標榜している部品ばかりで、ユーザー(ライダー)の心をくすぐり続けている。

でも、それって、体調の悪い“人”を化粧や髪型、派手な服装で補正しているのと同じようなもの。
基本を忘れたオートバイとの付き合い方は、オートバイ本来の能力を発揮できないだけでなく、過剰な場合にはライダー自身や他の方々の健康や生命を脅かす原因となるからとても始末が悪い。

 
 
【 どう伝えれば良いか? 】

本当に大切なのは、大量生産のために短時間で組み上げられた部品たちを、一度分解するかボルトを緩めてやって、本来のあるべき場所に戻してやる 「整体」 だったり、コスト削減の為に不十分な表面処理や潤滑剤塗布を行なう 「美肌処理」、乗る人の体躯に合わせてオートバイ本来の能力が発揮できるようにするセッティング作業 「フィッティング」 だ。

でも、市井のオートバイ販売店ではこの“基本”を行なっていない。
何故なら、ユーザー(ライダー)が 求めないし、対価を払わないし、何よりも オートバイ販売店自体がその“基本”を知らないのだ。

次から次へと見栄えが良く、新しい装備や仕様のオートバイを作っては購入意欲を掻き立てようとするオートバイメーカーに、さほど大きな意味も無く高性能を謳って交換部品を売ろうとする部品メーカー、そしてそれらの動きに迎合しているオートバイ雑誌編集社たちによって作り上げられている消費社会を変革していくのは後回しにしよう。

先ずは、“彼” が納得できるような、誰でも分かる説明から始めよう。
    
 
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オートバイとの接し方」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰しています、長野県の伊藤敦です。仕事を独立して一年何とか頑張ってやってきた成果か週一日ぐらいの感じでバイクに乗る機会ができるようになりました。そこで質問ですがオイル交換は半年または走行距離でしますがフロントフォークのオイル交換はどのくらいの感覚でするのがベストでしょうか?そこまで気を使うバイク屋さんがいるかどうか走りませんが折角乗るのであれば気をつけたいと思いますので参考程度で構いませんのでご指導お願いします。

こんばんは 伊藤くん!!

その後も お変わりなく、元気に毎日をお過ごしでしょうか。
以前の日本と世界を股にかけての多忙の日々から、多少はオートバイに触れる余裕が出てきたとの事で、良かったですね。

折角頂戴した コメントに対しての返信が遅くなりましたが、どうぞよろしくお願い致します。

* * *

さて、今回は “ フォークオイル ”の交換間隔(時期・サイクル)についてのご質問ですね。

この種の質問に対しての【妖怪流】の回答は簡単で、気が向いたらいつでも交換すべし!!! です ♪

でも、これでは 一般的には回答になりませんね。
一般的にお勧めは、エンジンオイル と 同じサイクル で交換を強くお勧めします。

* * *

いずれ、Webサイトの【 オートバイの基本講座 】でも触れる内容の一つですが、オートバイ構成する素材・物質は 大きく分けて 4種類しかありません。

「金属」、「ゴム」、「油」、「合成樹脂」 の4種類です。

この中で、「ゴム」と「油」は劣化が早い素材ですから、定期的に交換が必要な品です。
そして、「油」の劣化は「ゴム」とは違って、「金属」の摩耗や破損の原因になる事は良く知られている事です。

例えば、「エンジンオイル」は使う度に劣化が進み、それに応じて「金属」(エンジン)の摩耗や破損へと確実へと繋がるので定期交換を推奨されています。

そして、「フォークオイル」も同様に、乗る度にフォーク内部の金属部品などの摩耗などに繋がります。
ただし、エンジンの場合ほどには影響する金属部品は多くない点と、例えフォークオイルが全く無かったとしても走れてしまうので、さほど重要視されず、教習所の車両を含めて殆どのオートバイは交換されずに一生を終えてしまうのだと考えております。

しかし! 実は! フォークオイルの劣化は別な大きな損失がある事を伝えなければなりません。
それは、人間(ライダー)のライディング感覚の劣化を招いてしまうのです。

フォークオイルは 前輪タイヤの接地感覚や直進安定感覚をライダーに伝えるのに大切な役割を担っています。

フォークオイルが劣化したままオートバイを走らせる事は、それらの感覚を適切に伝わらないだけでなく、ライダーがそれらを感じなくても普通だと思うようになる事が一番避けるべき損失なのです。

ちょうど、きちんと調律をしていないギターで歌う人は音痴になるように、フォークオイルのメンテナンスを怠って感覚音痴のままのライダーが数多くいるのが現実です。

しかも、安全運転大会や各種安全運転競技会に積極的に参加している人達の中にも多くいる程です。

* * *

長くなりました。

どうぞ、エンジンオイル以上に、フォークオイルの管理には気を遣って下さい。

エンジンオイルを下着だとすれば、フォークオイルはTシャツ(下着)だと考えて、汗をかくたびに交換をするように、良い男を目指してください。

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